朝日新聞のWebサイトを見ていたら、「ウッドショック」という言葉があった。
朝日新聞:ウッドショック、住宅メーカー「あるものをくれ」 高騰にも産地複雑
「新型コロナ」の世界的流行により、輸入木材が入ってこないために住宅メーカーが国内産にシフトをした結果、国内産の木材が高騰している、ということのようだ。
ご存じのように、日本の林業は衰退の一途をたどっている。
そのような状況の中で突然起こった、需要に戸惑っている、ということのようだ。
ただ、山から切り出した木材がすぐに住宅や家具等に使えるわけではない。
皮をはぎ、何年もかけ乾燥をさせてやっと使えるようになるのだ。
「新型コロナ」が流行する前、近くのショッピングモールで、建築資材や家具用として販売した木材の端材の販売をしていたことがあった。
カッティングボードに丁度良い大きさの端材があったので、お店の人に聞くと「3年位乾燥させないとカッティングボードとして使えないかな?」と言われ、「検討します」と言って、帰ってきた経験がある。
建築資材として使われた端材でも、用途によってはまだ3年も乾燥をさせるのか?!と、驚いたのだ。
鉄筋コンクリートと違い、木材はそれだけ手間ひまと時間をかけ、やっと使える状態になるのだ。
そう考えると、今住宅建材として使いたい木材は、数年前に伐採されたもので、「日本の林業が衰退の一途!」と、言われていた頃の木材ということになる。
言い換えれば、需要と供給に合わせて伐採された木材であり、伐採量そのものも決して多くは無いはずだ。
そこに突然需要が起きれば、「ウッドショック」という名の「ウッドバブル」が、起きてくるのでは?
ただ建築資材として使えるようになるためには、少なくとも50~60年はかかると言われている。
林業が衰退する理由の一つが、植林から下草の管理、間伐等手間をかけ一世代を超えて、やっと出荷することができる、という長い時間が必要という点があると、言われている。
問題となっている「花粉症」の原因であるスギやヒノキは、戦後に住宅建材用として植林され、輸入木材との価格競争により、伐採されることなくそのままになったものである、ということも言われている。
それほどの時間を要するのが林業であり、ビジネス化という点では「成育の効率化」とは無縁の産業だともいえる。
だからこそ、産地は困惑しているのだ。
高値で売買できれば、一時的には儲かるが、それは過去何度も起きた「バブル」と同じで、長続きするモノではない。
しかし、上述した通り林業そのものは「製品化」までに、50年、60年という時間が必要だ。
今の価格が、50年後・60年後の価格ではない。
戦後の住宅不足により半ば国策として、植林事業を積極的に進めると同時に、住宅建設を進めた結果、輸入木材による国産木材の暴落を経験している人たちからすれば、「今の儲けは未来の損失」という考えが起きるのも当然だろう。
そもそも、今の住宅需要というのは、住宅メーカーが思うほどあるのだろうか?
日本各地で「空き家」が問題になって久しい。
住宅そのものが不足しているのではなく、今ある住宅が活用されていないだけなのでは?
それだけではなく、「家を建てる」ための資金調達が、この経済状況では厳しいどころか、「コロナ禍」で生活の不安を抱えている人も数多くいる。
そのような経済状況の中で、住宅メーカーが家を建てようとするのは、何故なのだろう?
住宅メーカーのビジネスモデルが、「家を建てる」ことしかない、と言うことだろうか?
木材の高騰は、一見林業にとって良いことの様に思えるが、林業が抱えている根本的な問題解決になっていないように思えるのだ。
林業には「国土保全」という観点からも、重要な産業であると考えれば、「木材が製品化するまでの長期的ビジョン」を考える必要があると思う。