今朝、FM番組などで「イオン、非正規雇用者に対する時給7%アップ」という話題が取り上げられていた。
日経新聞:イオン、パート時給7%賃上げ 国内最多40万人
イオンより前、ユニクロやGUを展開しているファーストリテーリングが、正規の新卒者の給与を30万円にする、という話題もあった。
ファーストリテーリング程の衝撃ではなかったかもしれない、イオンの非正規雇用者に対する時給7%アップだが、イオンで働いている非正規雇用者40万人が対象と聞くと、イオンとしての人件費は相当額になる、ということが分かる。
そこまでして、イオンが非正規雇用者の賃上げ7%にするのか?ということを考える必要があると思う。
まず最初に考えられるのが「人員の確保」だろう。
イオンのように、スーパーマーケットだけではなく、様々な「第3次産業」に関わる事業を展開していると、「優秀な人員の確保」は最優先されるべき事だろう。
随分前に言われてきた「AIによって奪われる職業」の中には、いわゆる「第3次産業」と呼ばれる「サービス業」が多く含まれていた。
いずれAIにとって代わられる仕事が多いのに、人員の確保?と思われる方もいらっしゃると思うのだが、現状のサービス業は「人の手」で行われている部分が相当ある。
バックヤードから店内への商品だしなどは、その一例だろう。
生活者にとって、見やすい・選びやすい商品棚つくり、というのは小売りにとってとても重要な仕事だ。
売れ筋商品を並べれば良い、という訳ではないし、店舗ごとの購買客像も違うはずだ。
そのような「微妙な違い」に合わせて、商品棚をつくるということは、まだまだAIが及ぶ分野ではないような気がしている。
だからこそ「人の手」が必要なのだ。
もう一つは、公務員や金融を除く「第3次産業従事者の給与が、他の産業に比べ低い傾向にある」という点だろう。
意外な印象を持たれる方もいらっしゃるかもしれないのだが、「第3次産業=サービス業」のうち、公務員や金融、コンサルティング業のような仕事に関しては確かに給与は平均値に近いか、高い傾向にあるはずだ。
しかし、それ以外の「介護職・保育士・小売り」等に関していえば、第2次産業のように企業規模が大きくなく、多くの従事者が女性で非正規雇用者ということもあり、賃金設定そのものが低く設定されている。
そして、バブル経済崩壊後、急速に増えた労働者というのが「非正規雇用者」であり、企業の賃金抑制の役割を果たしてきた、という側面がある。
このようなことを考えると、今回のイオンの非正規雇用者の時給を7%上げる、というのは相当思い切った判断だという気がする。
イオンという様々な事業を展開し、事業規模も大きかったからこそできる判断ではないだろうか?
それを地元密着の小規模生鮮スーパーで同様のことを求められても、おそらく難しいだろう。
そして非正規雇用者の賃金を上げる事で、わずかながらでも経済を動かしていきたい、という考えもあるはずだ。
このような議論は「卵が先か?鶏が先か?」ということになってしまうのだが、まずは影響力のある大規模事業者から、給与アップをしていくことで、経済が上向きになることは難しいと思う。
その意味で、今回のイオンの非正規雇用者に対する時給7%アップは、小さなさざ波から大きな波へと経済を動かすきっかけとなるのでは?と、期待したい。
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