日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

男性を起用する、コーセー化粧品 ‐視点を変える‐

2023-04-06 21:11:44 | マーケティング

日経新聞のWebサイトを見ていたら、大谷翔平選手を広告に起用した企業の記事があった。
日経新聞:「大谷翔平特需」コーセーの賭け 社内「韓国派」を社長が説得 

有料会員記事なので、記事内容を全文読めるわけではないが感の良い方なら「あ~~~、あの広告」と、気づかれるのではないだろうか?
コーセーが、MLBで活躍をする大谷翔平選手を広告として起用しているのは、「雪肌精」という名前のスキンケア商品と、それよりもハイブランドスキンケア商品として位置づけられている「コスメデコルテ」だ。
コーセー・雪肌精公式:大谷VS太陽キャンペーン 
コーセー・DECORTE:大谷翔平 キャンペーン 

実は、コーセーが広告に女性向けの商品ラインに男性を起用したのは、大谷翔平選手が初めてではない。
大谷翔平選手を起用する前、フィギュアスケートの羽生弓弦さんを「雪肌精」で起用している。
これまで「雪肌精」の広告は、新垣結衣さん等を起用してきただけに、羽生弓弦さんを起用するというのは随分大胆な決断だな~という、印象を持っていた。

結果として羽生弓弦さんの中性的な魅力、アスリートとしての真摯さ、何よりもしなやかで豊かな表現力が、男性・女性という枠を超え広告として魅力的なモノとなったような気がしている。
もちろん、この時の購入者は世代を超えた女性だったのでは?と、考えている。
何故なら、羽生弓弦さんは世代とは関係なく多くの女性ファンがいたからだ。
その点から考えると、今回の大谷翔平選手の起用は、納得できる部分と何故?と感じる部分がある。

大谷翔平選手は、羽生弓弦さん同様男女関係なく、そして世代も関係なく多くの人から支持されている。
特に、先に行われたWBCの試合での活躍で、野球を知らない女性層のファンも獲得したはずだ。
ただ、大谷翔平選手に起用はそのような「新たな顧客層の獲得」だけではなかったのでは?という、気がしている。

一つは「雪肌精」という商品での起用という点だ。
「雪肌精」というのは、いわゆる「美白スキンケア」と呼ばれるカテゴリーの商品だと、考えている。
今や男性であっても、スキンケアは必須となり、ここ数年ドラッグストアーでは男性向けスキンケア商品の売り場が拡充されている。
その中でも特に売り場を大きくしているのが「日焼け止め」のように思われる。
かつてのような「日焼けした、逞しい男性」ではない男性像が、求められているようだ。
そこに、本来女性向けスキンケア商品という位置づけであった「雪肌精」に、羽生弓弦さんという男性を起用するということ自体、話題になったが、今回の大谷翔平選手は太陽に日差しをたっぷり浴びる野球選手だったことから、意外性もあったのでは?と想像するコトができる。
そして「雪肌精」よりもハイブランドという位置づけとなっている「コスメデコルテ」への起用は、男性が使うのではなく男性から女性への贈り物、あるいは「このような商品を使う女性は素敵」ということを、大谷翔平選手を起用することで、女性にアピールをしているのではないだろうか?
だからこそ、社長自ら社員を口説き落とすという、逆転現象のようなコトになったのだろう。

日経の記事にあった「韓国」云々という部分だが、10年ほど前から若い女性を中心に「韓国コスメ」が人気となっている。
女性ファッション誌には「美容大国・韓国」と紹介されることも多く、確かに韓国出身のタレントさん達の多くは「肌がキレイ」と感じさせることも多い。
もう一つは、K-Pop人気ということもあったのでは?と考えている。
ご存じの方も多いと思うのだが、元々韓国での音楽市場は日本と比べると、各段に小さい。
その為韓国エンターテイメント業界は、日本を市場の中心として考え、アジアへの進出に積極的だった。
そのような背景があり、「冬ソナ」以来の「韓流ブーム」となり、それが定着しつつある、というのが今の状況なのだ。

日本の生活者の志向から考えれば、当然「韓国人タレント」の起用があってもおかしくはなかっただろう。
それをあえて、大谷翔平選手を起用する、ということは「日本人としての誇り」のような部分もあったのではないだろうか?
「広告」そのものは、不特定多数の人達に届ける媒体だ。
とすれば、大谷翔平選手の起用は、大成功だったのではないだろうか?



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