日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

世界的企業の対応が分かれた、ジャニーズ問題

2023-09-20 21:27:43 | マーケティング

まだまだ連日のように報道され続けている、「ジャニー喜多川氏の性加害問題」。
既にCM等に、ジャニーズ事務所所属のタレントさん達の起用を取りやめ、見直しを発表した日本企業が、数多くある。
その対応について、「起用タレントの問題ではないのに、可愛そう」という同情的な意見もあれば、「タレントに非はなくても、長い間そのような行為があり、暴露本等も出ていたのだから、その時点で起用を止めるべきだった」という意見もある。
様々な考えや意見があるのは、当然だと思うし、このような意見が出ることで「これからのCMタレント起用」を考える、一石となるのでは?と、考えている。

そして、日本に支社を置く2つのグローバル企業の対応の違いもまた、考えさせられる。
朝日新聞:P&G社長「責任ある広告主でありたい」 ジャニーズを起用し続ける意図 

朝日新聞:元ネスレ社長「ジャニーズ性加害のうわさ知り、起用しなかった」 

同じ朝日新聞のWeb版に掲載されている記事である、というのも興味深いのだが、P&Gもネスレも世界的企業である。
P&Gは、洗剤等の日用品からペットフード、食品を扱っている。
ネスレは、スイスに本社を置く、世界一の食品会社だ。
扱い商品の幅の広さから考えれば、P&Gの方が、市場規模の大きな企業ということになる。
ただ、ネスレは食品という分野に関しては、売上はもちろん展開している国においても世界一だろう。
いずれにしても、CM取りやめ・CM降板を決めた日本の企業よりも、様々な国における、市場と生活者についての情報を持っている企業であることには、違いないだろう。

特に、P&Gのマーケティング力は「マーケティングの教科書」とも言われるほど、優れたものがある。
まぁ、反面とんでも無い人が在籍していたこともあるのだが…。
日刊ゲンダイ:吉野家常務は"シャブ漬け”発言で解任・・・大企業に人気「P&G」出身マーケターのお粗末ぶり 

今回P&Gが取った対応は、再発防止策等についての詳細な計画書提出を求める、というモノだった。
タレントが起こした問題ではないので、事務所が今後どのように考え、改善をし、社会的に認められる企業となる、というチャンスを与えている、とも受け取れる対応だろう。
見方を変えれば、ジャニーズ事務所に甘い対応と受け止める人もいるだろう。

一方、ネスレは「社会的な問題がある、といううわさがあったので、最初から起用しなかった」という、リスクマネージメントとしてはお手本となものだった。
ここで注目する必要があると思うのは、ネスレという企業が取り扱っている商品群だ。
「ネスレ」と聞いて、最初に思い浮かぶネスレ商品は何だろうか?
「ネスカフェ」、「キットカット」、「マコーミック」等が多いのでは?と、想像する。
これらの商品に共通しているのは「家庭・家族」と言った「親しい関係の人たちと食べる場面」ではないだろうか?
すなわち、性犯罪と一番遠くにあるべき商品なのだ。
だからこそ、「噂」の段階で起用をしない、という方針となったのだろう。

この2社の対応から考える必要があるのは、今後日本の企業が「CM起用をやめました」ではなく、「CM制作において、どのような基準でタレントを起用するのか?」という明確な社会的メッセージである。
何故なら、「CMは企業が提供する商品と生活者が初めて出会うツール」だからだ。



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