今日は、沢木耕太郎さんの講演会に行ってきた。
私の嗜好にぴったりの講演だった。といっても、沢木さん、昨夜は、同窓会で、そのまま読書に没頭してしまい、講演の準備がほとんどできなかったという。
お題目は、”旅の夢、夢の旅”だったが、”ロバートキャパを追いかけて”なんて題目でもいいぐらい、ロバートキャパの話が中心だった。
そういえば、私も昨日は同窓会、先週は、同窓会のダブルヘッダー、そして、来週ももう一つ。何故、同窓会は11月なのか。
季節のせいもあるが、年の瀬を前に、旧友の無事を確かめあう?年末は、INGの世界の忘年会、その前にちょっと懐かしの同窓会?
別に11月にこだわる必要はないんだけど。ゴルフのハイシーズンなのだが、4週連続ご無沙汰になってしまった。
沢木さんの本は、深夜特急を全部読んだぐらいだが、フィーリングはグー。大学卒業後、就職した会社を一日で止め、執筆兼放浪活動に入ったとのこと?
沢木さんは、趣味がことごとく仕事になってしまったということで、結構不幸?
昨晩は、”選択の科学”という本をお読みになったことだが、要するに、自分に選択肢があることとないこととどちらが幸せかといテーマだ。
当然選択肢が多い方がいいうに思うが、選択肢が多すぎると困ってしまうのも人間の本質という。例えば、ジャムを店頭に並べたとすると、商品の種類を少なくした方が、よく売れる!
また、何らかの成功体験があると、選択をする際の大きな要因となるという。これは、ラットの研究から得られた研究成果だ。
旅は、余儀ない旅と夢見る旅に分けられるというが、夢見る旅をしたいというのが、沢木さんの夢。確かにそうだなぁ。
ロバートキャパは、戦争写真家。沢木さんが某雑誌で、キャパが日本で撮影した写真の場所を特定し、同じ場所、同じアングルでの写真を撮る連載をしている。
この写真は、キャパのあまりにも有名な戦場写真。スペイン内乱の時に撮られた。このような、戦争中の撃たれた瞬間の写真は、後にも先にもこれだけという。
ところがこの写真、真贋論争が絶えない。
大きな理由の一つに、全く同じアングルで撮られた、やはり、兵士が撃たれた写真もあるが、特に兵士の屍が回りにあるわけでもない。
兵士に弾が当たった様子もないし、ただ滑ったか、ヤラセではないのか?
沢木さんは、この真贋論争に決着をつけるべく、この写真の洗い直しを始めたのだ。
この写真が撮られたと言われているのは、スペインのセロムリヤーノ。コルドバに近い村という。その内戦で亡くなったのは、たった一人で、その亡くなったガルシアさんの弟がこの写真は兄だと言ったというのが、この写真が本物といわれる根拠になっているが。
しかし、その信ぴょう性も疑わしい。キャパは、日本訪問後、ベトナム戦争の取材に行き、40歳で命を落としているから本人に聞くわけにもいかない。
同時に撮られたという下の写真。この一番上の人が、撃たれた人。しかし、この写真も実戦というよりは、訓練と思われる。この写真は、実戦ではありえないとアドバイスしたのは、戦争体験もある大岡昇平さんだっという。
そして、この写真が撮られた場所だが、沢木さんが夢にまで見たセロムリヤーノではなく、エスペゴというところであることが、山の稜線からわかってしまったのだ。スペインのやはりマニアックな研究家の成果で、本人に、実際に会って、話を聞いたという。ところが、写真の小麦畑は、今はオリーブ畑になってしまっていて、その先の証明はこれからの仕事になっている。ただ、ここで、戦闘が行われたことは、沢山の弾丸が見つかっており、確かだという。
ここからは沢木さんの推理。
キャパはスペイン内乱の際の共和国軍の軍事訓練に参加し、写真を撮って本部に送った。それを本部が、スクープ写真として取り上げ、LIFEにも掲載され、高い評価を受ける。まだ、20歳そこそこのキャパは、それは違うとも言えず、一流の戦場写真家に祭り上げられてしまう。その後、本当の一流の戦争写真家になるべく、命をかけた取材を続け、ノルマンディ上陸などで、凄い瞬間を切り取り続けることに成功したのではないかという。
真贋追求プロジェクトは続いている。
私よりも一回り年上の方だが、うらやましい生き方をしていらっしゃる。
その後、六本木に寄って、ボブディランの絵画展を見た。昔見たポールマッカートニーの絵は、何とも評しがたい絵だったが、ボブディランの絵は、なかなかよかった。ゴッホやゴーギャンの絵に構図は似ているが、現代風に水彩でさらっと仕上げてあり、明るい部屋に飾るのにぴったりだ。思わずGETしたくなったけど、相応の値段はするので思いとどまった。でも、買っても後悔はしなかっただろう。
六本木ヒルズを抜けると毛利公園があるが、紅葉が奇麗だった。池の中の物体は、クリスマスツリーか?ちょっと違うんでないかい?
帰ろうと思ったら、人だかりができていて、歓声が上がっている。ベンツのミニバン(ちょっと見えないが中央)から、宇多田ヒカルさんがちょうどスタジオに向かうところだった。JーWAVEの生番組に出演のため、けやき坂スタジオ(右奥のガラス窓の部屋)に到着したのだ。
その後の放送は、この巨大スクリーン(左)に生放映されていて、みんなじっと宇多田さんの発言に聴き入っていた。宇多田さんは、自然体で、いい感じだった。本当のところは、スターで居続けるプレッシャーから解放されたかったのではないだろうか。