

敦煌物語という本を読んだ。昭和18年に松岡譲さんによって書かれた本。元々は、昭和12年に書かれた本という。数年前に復刻されたのをGETした。
松岡さんは、この前講演を聞いた半藤さんの義理の父、夏目漱石の娘婿になる小説家だ。
定かではないのだが、松岡さんは、敦煌に行ったことはないようだ。それで、このさぞ目の前で見たような話が書ける。まさに小説家の真骨頂。
スタイン、ぺリオ、大谷探検隊が、敦煌に訪れ、敦煌のお宝を次々にGETした史実を、平易に語り口調で小説にしてくれている。
ただこの本は、今も読める探検隊の話を小説化したもの。探検記は、嘘か本当か判然としなかったり、一部冗長だったり、ふっと話が飛んだりする。本書は、その辺がスムーズにアレンジされ、敦煌の部分に限って言えば、こちらの本がよっぽどリアルに読めるのが面白い。
当時、正倉院御物がどの程度公開されていたのか知らないが、敦煌が見つかる前は、正倉院御物が、当時の中国のも最高のお宝だった。中国は、王が代わる度過去のものを破壊したから、石などでできているもの以外は、破壊され、ほとんど残っていないのだ。
敦煌の価値の大きさは、その中国の特性によるところも大きい。
本書の装丁もいい。四六版宣言と銘打っている。この表紙の菩薩様は、一対一で拝ませていただいた。たぶん世界一の菩薩様かもしれない。
そういえば、最近、日経の土曜版で、敦煌の特集が組まれているので、その素晴らしさは、そちらでもどうぞ。