この度の豪雨災害で被害を受けた方々(特に真備地区)、謹んでお見舞い申し上げます。
リスペクトコラムです。
西野ジャパンお疲れ様でした。当ブログでは、「運と博打のど突き合いサッカーで、10人のコロンビアに勝って、勢いに乗っただけ」と辛口のコメントをずっと口にしていました。ポーランド戦からベルギー戦にかけて、日本の大躍進として西野監督礼賛の声が日本中から上がり、こういう辛口意見は、セルジオさんや、岩政選手、釜本氏などごく少数で、またそれに対するファン・サポーターの反応もあったようです。ただ、今回の代表監督選考で流れてくる情報では、強化委員会も、西野監督の評価もしくは日本人監督の評価がそれほど高くない事がわかり、当ブログの個人的評価もまんざらでも無かったと認識してます。今回具体的に西野ジャパンの総括検証を個人的に行いたいと思います。
【西野ジャパンのポジティブな面】
〔海外組選手の成長〕
今回のチームで一番良かった点、強さの要因は海外組選手の落ち着き払った表情だったかなと。前評判の高いどんな相手に対しても、物怖じせずにやってやるぞという気迫の強さを感じました。これは良かった。過去の大会では相手サポーターの大歓声にビビり、有名選手にビビり、プレーのレベルの差にビビっていましたが、今回は最後まで互角に向かい合えたと思います。普段、欧州主要リーグでもまれている相手ばかりなので、特に緊張も無かったのでしょう。結果論になりますが、海外組ばかりの顔ぶれが結果的に好結果をもたらしたのかと。これが国内組ばかりだったら、過去と同じだったのか。そういう海外組選手達の能力を引き出せたのは、西野監督のコミュニケーション能力の高さか。通常は世界を知らない日本人監督に対して、海外組選手が上から目線になって、衝突が起こるところですが、本田選手とちょっとあった以外は聞いていないので、上手くできたのでしょう。個人的には、大迫、乾、原口3選手の評価が高いです。カタールの時も引っ張って行って欲しいですと書いたが、3人とも微妙な年齢か。
〔まとまり、コミュニケーションの良さ〕
ハリル監督の更迭の原因の一つが、いわゆる「パワハラ」的なものだったそうですが、西野監督は「俺は世界を知らない。教えて欲しい」と膝を崩して選手一人一人と接していったのが良かったですね。日本人監督なので、言葉の障害もゼロ。ポゼッションではなく縦に入れるハリル監督の戦術に対して、ボールをつないで前向きに攻めるという西野監督の戦術は、選手のニーズにも合致し、チームが一つになれたようです。
あと、過去の大会では派閥ができた事もありました。ドイツ大会ではレギュラーの中田派と、控えの小野派に分かれていたと聞いています。今大会では一つになっていて良かったです。
〔コンディション調整の成功〕
この点は今回どこも取り上げていないようですが、当ブログはチェックしていました。過去のドイツ大会、ブラジル大会でコンディションの調整に失敗し、100%でないコンディションのまま試合に臨み、能力を発揮できないまま惨敗しています。共通するのは外国人監督による試合前のハードな練習とインターバルとのバランスが取れなかった事。外国人監督はとにかく高いレベルを求め、それを克服するためにハードな練習で選手を追い込むかもしれません。キャンプ地と試合会場の気候の格差をリスペクトできなかった面も一因と聞いています。
前回大会で遠藤選手が「ドイツの時と似てきた」というコメントを聞き逃さなかったのですが、結果的に同じような結果になりました。今回はそういうのは一切無かったため、選手の声を十分に取り入れたコンディションの調整ができたのでしょう。
あと、強化試合では移動の疲れが出て、海外組は能力を発揮しきれないまま終了するというパターンでしたが、本大会では練習・待機期間がゆっくり取れたため、十分に休養も取れ、100%のコンディションになり、ベストプレーを出せたのでしょう。
【西野ジャパンのネガティブな面】
〔幸運〕
まずは組み分け。グループHは死のグループならぬ、楽なグループになりました。唯一、W杯過去優勝国が入っていません。最初から運がありました。開始3分のPK獲得&相手退場シーンがほとんどすべてだったと思っています。解説では日本の技術と攻めの姿勢があのシーンをもたらしたと言っていますが、それも運も作用したから日本にとって理想的な展開になったと認識しています。C・サンチェス選手はPK献上ファウルの常習的な面もあり、そこにボールが行ったのが一つ目、イエローではなくレッドが出たのが2つ目、「運」の面が大きいPKを蹴るシーンをさほど見た事がない香川選手が成功したのが3つ目、10人になっても影響なく勝つチームもある中で、この日のコロンビアは動きを止めてしまい、本来のチームでなくなったのが4つ目。一番大事な初戦で貴重な1勝を得、勢いに乗れて、プレッシャー無く能力を出し切れたのが5つ目。これら5つの幸運が今回の西野ジャパンにはあったと認識しています。まぁ、運も実力のうちとはよく言われますが。ポストを叩くなどシュートが入る・入らない、オフサイドにかかる・かからない、ファウルを取られる・取られないという試合中の細かいシーンも「運」が散りばめられています。そういう数々の運の多くが今回は日本に来たのかなと。
〔博打〕
西野監督はギャンブラーというイメージがあります。守備的ではなくどんな相手にも攻撃的に行くという時点で博打です。若手有望選手を切り、おじさんジャパンと言われた平均年齢が高く、岡崎選手などケガ持ちの選手も優先して選出して編成したのも博打。4年後を意識せず、この大会のみに注力して編成した訳です。これがこれからの4年間でどういう影響を及ぼすのかが気になります。
セネガル戦。決勝トーナメントを照準に主力を休ませ、先発6人を替えてベストではないメンバーで臨んだのも博打。相手はFIFAランク8位の強豪。61位の日本は一歩間違えば大惨敗で恥をかく可能性がありました。一番の博打はポーランド戦の最後の10分くらいの時間稼ぎ(詳しくは後日記事で)です。ポーランドの同調も運がありました。いろいろ読みもあったようですが、セネガルが追いついていれば、大いに叩かれていた事でしょう。それらの博打にすべて勝ったため、今回の成績があったと認識しています。前に16強に進出した岡田ジャパンも博打でした。寸前までダメで、協会に進退伺いを出すまで失墜していましたが、戦術を堅守からのカウンター、本田ワントップに直前に切り替えて結果が出ました。よく似た感じです。つまり、日本代表の16強はいずれも博打に勝ったという面が強いと思っています。世界での経験が豊富で、全幅の信頼厚いカリスマ監督による、優れた戦術で正々堂々に戦った結果ではないと。
〔ど突き合いサッカー〕
この人はガンバ時代からそうでした。そもそもはアトランタ五輪で受けた批判から、「なら、攻めるサッカーを貫いてやる」と、その後のJリーグでの試合はとにかく攻撃的な戦術を貫きました。ガンバ時代に何度も対戦し、某黄色いチームで何度も辛酸をなめさせられました。例えば2009年の天皇杯決勝。ACL決勝帰りで疲れていた選手を引っ込める事なく、前向きに来てやられました。ガンバ大阪というチームと相性も良かったのでしょう。この時代、3点取られても5点取り返して勝つというような戦い方のイメージで、大味のスコアが多かったです。
引いたコロンビア、セネガル、手負いのポーランドには通用しましたが、本気になったベルギーには通用しませんでした。ベルギー戦も2点リードした時点で堅守に切り替えていたら勝っていたかもしれません。愚直に前がかりをキープしていましたね。個人的なイメージは、例えばボクシングでいくらど付き合いが得意でも、リーチに差があれば結果的にはやられる。リーチの差をリスペクトして戦い方を使い分ければ勝つチャンスもあるというもの。
〔世界を知らない〕
西野監督は正直な方です。「あの30分間で判断できるスピード感が、自分には全くなかった」と吐露されています。これは世界の舞台での経験が無い事からくるセリフです。これはしょうがないです。日本人監督には経験がなく、外国人の経験者監督にはそれがあるという事。今朝のサンモニでは「引き出しの違い(特にベルギー)」と語られています。
結果的には南アフリカ大会と同じ16強止まり。戦績も1勝1分け1敗でギリギリ突破。内容はともかく、2勝1敗だった岡田ジャパン(オシム監督後のピンチヒッター)よりも低い成績でした。日本人監督はやはりここが限界だと思います。それ以上の高みを目指すなら、ピンチヒッター的な日本人監督ではなく、世界での戦い方を知る経験豊富な外国人か、しっかり育成された日本人監督の海外組かと。あと任期は2年がいいですね。欧州のように2年で一度チェックが入るのがいいと思います。
【今後の日本代表(日本協会)のポジティブな面】
〔ドイツに目を向けている点〕
一時期、Jリーグの前常務理事の影響もあったのか、MLSのアメリカに目が行っていた時代がありました。それまではJリーグ百年構想のモデルはドイツ。その当時どうして商業主義のアメリカなんだ、スポーツシューレのドイツだろと嘆いていました。時代は変わり、村井チェアマンの時代でアメリカから距離を置き、リーグでの社会貢献活動など、本来のJリーグが目指す方向性に回帰したと認識しています。田嶋会長は現役引退後、指導者を目指してドイツの大学に留学するなど、ドイツ贔屓で知られており、外国人に代表監督を任せる場合、ドイツ人が適任というのが持論。その辺は期しくも結果オーライでしょうか。
〔強化委員会がある程度正しく機能できている点〕
てっきり田嶋会長主導で西野監督なり、森保兼任監督という日本人監督就任があっという間に決まっていくと思っていました。実際は、強化委員会から、1勝1分け1敗で10人のコロンビアにしか勝てていないという評価で、西野監督続投には否定的だったと聞きました。いい価値観だと思いました。ワンマン化した人物のトップダウンではなく、ちゃんと機関決定が機能しているんだとちょっと安心しました。
【今後の日本代表(日本協会)のネガティブな面】
〔田嶋体制の継続〕
報道を見ていると、日本協会の対応は一貫性やタイミング性を欠き、混乱を広げた責任はW杯16強で帳消しにはならない、協会の体質改善は必要という評価が残っています。またスポンサーへの露骨な気配りが、今の体制で大きく目立ち、ハリルジャパンと西野ジャパンでの選手選考の大きな違いを際立てている印象があります。イメージ良くないです。当ブログでは田嶋会長の退任、新会長による新体制が早く発足する事を希望しております。ハリルジャパン解任の総括や検証もなく、西野監督と口を揃えて秋春制を提唱しています。Jリーグでは何度も却下されています。反対派だった原氏を副チェアマンに、霜田氏はJ2山口の監督に就任し、見えない対立構造が継続しています。これは好ましくありません。2年の任期で今年春に再任されています。次の会長選挙は再来年か。
〔世代交代時期の逸失〕
今回の23人のうち、4年後30代になっているのは実に18人。まさに「おっさんジャパン」。今大会では、植田、遠藤、中村、大島4選手が出場できませんでした。いずれもリオ五輪世代。おっさんジャパンとして、若い世代からの突き上げが足りなかったという解説もありますが、果たしてそうでしょうか。西野監督は初めからリオ世代を使う気が無かったのでしょう。過去6度のW杯で直近の五輪世代が出場しなかったのは史上初。同世代で本大会出場に大きく貢献した浅野、久保2選手らは選出もされず。伸び盛りの20代がW杯本番を体感できなかったのは今大会の負の側面と言われています。目先の成績をたまたま達成できても、これからの4年を考えると、そのツケは予想以上に大きいと思います。
〔スポンサー依存体質の増長〕
以前には「忖度ジャパン」と叩かれ、ハリル監督の解任は、報道ではスポンサーの意向も強かったのではないかと言われています。確かにスポーツ店に行き、主要メーカー売り場を見ると、人気選手のグッズばかり並んでいました(中には売れ残りではないかという声も)。結果的には、そのメーカーにとっての看板選手が、W杯に行けなかったら困るというメーカーの声が反映された格好になりました。当ブログではよく「どっちを向いてやっているのか」というコメントを書きますが、良くない流れです。本大会だけでなく、強化試合でもスポンサーのご機嫌取りの印象が強い、弱い相手ばかり招聘していました。昨日のFOOT×BRAINでもセルジオさんが、もっと強い国とのマッチメイクが必要と言われていましたが、何とかそういう構造的欠陥を矯正しない限り、この4年間も全く同じ。失われた4年になります。
〔選手に発言力の増加〕
ハリルジャパンに選出されなかった選手を中心に、日本協会に対して監督批判を行い、ハリル監督の更迭が実施されたのではないかと聞いています。同様にアルゼンチン代表も今大会ではチームがバラバラ感があります。果たしてそういうスタイルがまかり通っていいのかと。今回はハリル監督のパワハラめいた事があったようですが、本来はこういう形があってはいけないと思います。選出されない選手が密告して監督の首を挿げ替えようとする思惑、これはフェアプレーでしょうか。選出されたかったら、密告では無く自分を磨けばいい。だから、密告したと言われている選手は極めてネガティブに映っています。しかも、それに一部の選手にはスポンサーの影響も加わっているという噂がある最悪な構造。今回一定の結果を出して、当人たちはやはりこの流れで良かったと思っているのではないでしょうか。それが「日本らしい」のかと。海外組の台頭とともに発生してきた悪い傾向の一つだと思います。
〔西野ジャパンの日本人スタッフ〕
西野監督の退任と、外国人新監督(今日の段階での予想)の就任により、西野監督についてきた日本人スタッフは一旦退任となるのでしょう。手倉森、森保両コーチ、GK2コーチ、コンディショニング2コーチです。いくらか残るのかな。この約2ケ月間だけのワークでしたが、何だったのか。
以上です。あくまで素人一個人の主観が強い意見なので、気にしないで下さい。そういえば、「日本らしさ」という言葉が最後まで、監督、選手達からほとんど聞けなかったですね。当ブログの最初の予想では、無得点3敗でも「結果は出なかったが、日本らしいサッカーはできた」とコメントすると思っていました。ただ、「日本らしいサッカー」というのは、とうとう監督や選手から聞く事はできなかったです。なぜなのか、日本らしくなかったから恥ずかしくて口に出せなかったのだろうと。では、それはどんなサッカーなのか。それはやはり、正々堂々と持っている物をぶつける形でなく、運に任せた博打サッカーではないかと。
あと、「ごめんなさい」現象、「手のひら返し」という言葉が闊歩しましたが、それは普段は余りサッカーを観ないライト層の、一つの結果だけを見た「イベント」だったのではないでしょうか。単なる「ニワカ」層のブームであり、サッカーに詳しい周りの人でも、「西野監督じゃあねぇ・・・」という人が比較的多く、日本代表はブームではなく、しっかり地に足を着けた見方をすべきと思います。
引用:日刊スポーツ
話は変わり今日、№12EVERで開催された、ファジのアウェー東京V戦のPVに参加してきました。その模様は明日。