CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】茶碗と日本人

2018-03-23 21:04:49 | 読書感想文とか読み物レビウー
茶碗と日本人  著:吉良 文男

茶の湯に用いられる「茶碗」について論じた本でした
時代や、なりたちなんかを著者自身の見識や言葉で語りつつ、
推測や、想像を織り交ぜて、日本人が見出した美について
言及していくといった内容で
なかなか楽しく読めたのであります

様々な文献にもあるとおり、
日本の茶碗で、志野だの、織部だのと呼ばれているそれこれは
その名前の由来がよくわかっていないというお話を混ぜつつ、
そもそも、茶碗の個体識別を行って、
それこれがよい、あれそれが素晴らしいと、
茶碗一個一個を別に扱うようになったのが
茶の湯、あるいは、茶人という人たちの凄いところであった
そんな風に読めたのであります

その茶人という人たち、あるいは、それに類する人たちが
自分たちなりの美意識というのを
ひとつ、ほかと違う、画一的ではない何かを持つものとして
茶碗のひずみや、景色に見出していったというところ
それをありがたがるというのが、一種独特であると
そんなお話がなかなか楽しいというか、
まぁ、そうだよなぁと、理屈ではなく納得する内容でありました

やや飛躍してと当人も言うとおり、
この不完全性と言い換えてもいいような物好きは、
世界的に見ても、ミロのビーナスなんかに代表される
手がないだの、どこか欠けている芸術作品の美意識にも
通ずるところがあるんじゃないかと
そこに想像をする余地がとか、様々試みて論じているのが
印象的だったのであります

そういう理屈なのか、それを越えたところに
茶碗鑑賞というか、茶の湯めいたところのいう侘びさびが
あるように思えるから、面白いことだなと
なんとも感じ入ったのであります

内容では、山上宗二記についてかなり言及していまして、
桃山数寄の当世や、そこに見出した何か精神的なものなんかも
あれこれ論じられていて、ためになるというか
面白い内容でありました
へうげもので、かぶれた身分としては
大変面白い、勉強になる一冊だったように思います
井戸や天目のありようもまた、不思議でありますが
それらをもってして、なんか、独特の美意識というのが
日本のそれなんだと思いたくなる内容だったのであります
理屈ではないのだ