CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】信仰

2022-10-22 20:55:33 | 読書感想文とか読み物レビウー
信仰  作:村田沙耶香

短編集というより、もはやショートショートだった
SFめいた感じもさておきながら、不思議な世界観を当然に語り、
その物語が紡がれているというのが楽しいところで、
表題作は特によい一遍だったと思うのである

信仰という、今のご時世なかなか尖った内容というか、
変な勘繰りにあいそうなそれだけど、全然関係なく(発行日からして当たり前なんだが)
それでいて、カルトというものの端的な部分がすごく濃密というか、
短く簡潔にまとめられていて、偽物を見ているのに本物みたいというか、
このコテコテと作りこまれたものを見せられているのに
なんか自然ぽい、演劇みてるような感じがすごくよい一遍だった
最終的に信仰とはなんぞやとか、そんなお話になるはずもなく、
ある種の酩酊というか、不理解みたいなのがとても楽しく描かれていて
こういう世界だよなと思わされる感じが
すごく好きだと思えた

短編それぞれは連作ではないので、
関連がありそうでない感じなんだが、
どうやら、色々なテーマのもとに書いたものもあったりして
この作者が書く多様性とはこうなのかと、
なるほどと考えさせられるというか、大喜利とも異なるんだが
多様性というものをこの作者らしい視点で描いていたと
はっきり理解できて、とても楽しかったのでありました
均一とカルチャーショックという対峙ともいうべきそれは
とても楽しい、多様性とかうんぬんとかいうきれいごともあるが、
この荒唐無稽感の中で、切り取られた風景が、
今現在、この世界のそこらに転がってそうな話だというグロテスクさというか、
いやー、他人とは理解しあえないなぁというのが
ものすごくはっきり描かれていて、
それでいておとぎ話のように、ほのぼのした雰囲気に無理やりしているところが
とてもよかったと思うのである
不条理と違うんだが、こういう、わざとらしさを隠さない感じ、すごく好きだわ

代表作のコンビニ人間をいい加減読まないといけないなと
気持ちを新たにさせられた感じである
生命式はあんまりだったんだが、今回のこれは、かなり好きな小説だった