森の中の一本の木

想いを過去に飛ばしながら、今を見つめて明日を探しています。とりあえず今日はスマイル
  

「わたしを離さないで」

2016-03-20 00:56:12 | テレビ・ラジオ

今期のドラマの中で、この金曜ドラマ「わたしを離さないで」が私の一番のお気に入りでした。

日本生まれでイギリス育ちのカズオ・イシグロの「Never Let Me Go」(わたしを離さないで)が原作。

 

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
土屋政雄
早川書房

 

この物語は既に映画にもなっていて、私はその予告編を映画館で観ました。

今その映画のHPなどを訪れて動画などを見ますと、ここまでさらしていたのかと驚かされるのです。You tubeで確認した映画館での予告編にも、やはり「ある目的の為に」「特別な使命」「提供」と言う言葉は出ていて、クローンの臓器提供がテーマなのだと容易に推理出来た事を思い出しました。

そう言う映画は、「もういいや」と、その時は思ったのです。なぜなら同じテーマの映画でユアン・マクレガー主演の「アイランド」を見たからです。この映画はSFアクションで物語の設定はかなり衝撃的で、なかなか面白かったのですが、似たようなものならばもう良いと思ったのでした。

でも「わたしを離さないで」の映画は

「この命は誰かのために。この心はわたしのために。」というコピーで、予告編からもまったく切り口が違う事が分かりました。

しかも映像が詩的で美しい。

とっても気になりました。ですが家の近所では公開されていなくて、見に行く事は叶いませんでした。

それのドラマ版となれば期待値が上がるのも無理のない事だと思います。

 

そしてこのドラマは、私の期待に応えてくれた質の高いものでした。

 

どれだけハンカチを濡らした事か。

 

もしも私がある日、今の環境で自分がクローンであると知ったならば、そしたら私は驚くかもしれませんが「それが何か?」と思うと思うのです。クローンは人間だと思っているからです。だけど、クローンゆえに人権もなく自由も未来もないと言われたら、私は何を思うのでしょうか。

「アイランド」のヒーローとヒロインのように戦うのでしょうか。それとも運命を受け入れて生きていくのでしょうか。

 

これはクローンたちから臓器提供を受ける事が出来るようになった近未来を、その提供者側からの視点で描かれたSFです。

でもそれは世界観の設定でしかないような気がします。提供者である彼女たちを可哀想な人たちとは見る事は出来ず、さながら自分たちと重なるものを感じるのは、実は自分たちでさえも本当は何者であるのか分からないのだと、心の底で思っているからなのかも知れません。

 

陽光学園の時代に渡された宝箱。

恭子の宝箱は、生きてきて触れ合った人との思い出の品たちでいっぱいになってしまって、蓋も閉まらなくなってしまいました。

陽光の園長だった美恵子先生は、その宝箱をなぜ渡したのかをこう語りました。

「奪えないものを与えたかった。体は奪われても想い出は奪われないあなた方だけの物だから。」

 

私たちだって、見えない宝箱に想い出でいっぱいにしながら生きているような気がします。

私たちは何処から来てどこに行くのか。何のために生まれてきたのか。その答えなど出せぬまま、そしてやがては死ぬのです。

恭子は、私たちはその生きる目的があらかじめ知らされていただけと語りました。

 

であるならば、生きるとは、その見えない宝箱をいっぱいにするための毎日なのかも知れません。

(これもドラマ内で、もっときれいな言葉でまとめられていましたね。もう一回見ないと、その言葉を忘れてしまったみたいです💦)

 

因みに臓器提供の話は、いかなる分野のいかなる切り口で有っても辛い話が多いような気がします。

 

最後にこのドラマの印象深かったシーン。

美和を演じた水川あさみさん、凄く良かったです。ずっと恭子を苦しめ続けた美和でしたが、その彼女の本心が見えて来た頃から泣きっぱなしです。

そして手術室に向かう時に美和が言う

「わたしを離さないで!!」は二つの意味で心に食い込みました。

一つはヒロインではないのに、タイトルにまでなっている重要な言葉を言うのかという点。そしてもう一つは、そのまま単に心に深く響いたのです。感動と言うのでもなく感銘と言うのでもなく、なんていう言葉が良いのでしょうか。ただただ涙が溢れました。

 

ともが最後に言った言葉も印象的でした。

「もう一度恭子に会いたいとずっと願っていたんだ。会えたばかりでなく一緒に暮らせたなんて。願いはずっと叶っていたんだよ。」

 

夢はずっと叶っていたー。

それに気が付くことが本当の幸せなのかも知れません。

 

命を断とうとのぞみが岬に来た恭子。その足元にトモのボールが流れつくと言うのは予想できた展開でしたが、それでも泣けました。

美しいシーンはたくさんありましたね。

終わってしまって少々ロスの私です。

 

 

わたしを離さないで [DVD]
キャリー・マリガン,アンドリュー・ガーフィールド,キーラ・ナイトレイ,シャーロット・ランプリング
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

 

 

わたしを離さないで Blu-ray BOX
綾瀬はるか,三浦春馬,水川あさみ,伊藤歩,麻生祐未
TCエンタテインメント

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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2 コメント

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私も見ました (justyblu)
2016-03-22 08:58:48
テーマがテーマだけに重すぎて、希望なんかあるのだろうか・・・?
と、思って見ていましたが、
「想い出は…、心だけは、何ものにも奪うことが出来ない」
と、いうことを感じました。

美和の「私を離さないで!」は、私には、「私を忘れないで!」と、聞こえました。

トモに「生まれてきてよかった」ことが見つかり、それが恭子と出会えたことだということにも、救われた気がしました。

一番大切なものは、何かをなしたとか、何かになったとかいうよりも、
人との関わりの中にあるように思います。


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justyblu様 (kiriy)
2016-03-22 12:00:41
こんにちは~。
物語的な「助かる」とか「システムが変わる」みたいな希望は、遠い未来にあっても、すぐにはなかったように思いました。
それでも気になり見続けてしまったのは、理不尽に命の期間を決められている彼らと、いつか寿命が尽きる自分たちと、本当は何も違っていないと感じていたからかもしれませんね。

>美和の「私を離さないで!」は、私には、「私を忘れないで!」と、聞こえました。

そうだ。本当に、そう思いました、今。だからあんなに泣けたのですね。

なんだか毎日を大切に生きよう、触れ合った人たちを大切にしようと思えるようなドラマでしたね。
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