
「人は生きるためにお手本がいる。多くの人はいい物語を多く読んで、生き方を模索していくのです」
もうかなり前になるが、山本兼一さんがこう語られるのを読んだことがあった。
そして、あんなふうに生きてみたいと思える人生の師に出会えたら真似をしてみる。そのうち自分が見えてくる、と自分探しではなく「他人探し」の進言があった。昨年57歳で亡くなったが、『火天の城』での宮大工棟梁岡部又衛門、『利休にたずねよ』に描かれた千利休も、氏の人生のお手本だったのだろう。映画を見たいと思っていて、結局見逃してしまった。
『眉山』、さだまさしさんの小説はこれが初めてだった。眉山がどこにあるのかも知らずにいた。
波踊りの演舞場での父と母をカメラに収めようとする主人公。
「父は、目を赤くして、じっと母を見つめていた。
だが、母は、ただの一度も父へ視線を送らなかった。
毅然として表情を崩すこともなく、彼女の生きてきた道のとおりに。」
「母は『一生を賭けた大好きな人』と今、命がけですれ違っている。」
「どれほど切なく、苦しく、愛おしいことだろう」
「ようやく母に辿り着いた。」 この一文で終わっている。
映像で観てしまおうか。それも惜しい気がする。見ないままにしておこうか。迷ったけれど、レンタルショップでDVDを探した。
土曜の夜、それに、雨なので…。