春立ちぬ逆立ちでもしてみるか 前川弘明
明るい日差しに包まれて、次第に気温も上がってきた。春立ちぬ。そこかしこに春の気配を感じる今日、春の証を探ってみれば、積もった枯葉の下からのぞく緑の葉っぱ、紫陽花には固く膨らんだ大きな芽吹きもあるし、南の方は霞んで見えた。
14℃の電光表示を見かけたが、春は名のみ。そろそろかなあ~とその足音に胸焦がすと遠ざかってしまう。じらされて、それでも待つのはいいものだ。季節は必ず移り行く。
たまった資料などを整理していたら、山本兼一の『夢をまことに』の舞台風景を紹介した冊子が出てきた。
京都新聞に連載された作品だった。近江国、姉川のほとりにある国友村(現在の長浜市)の鉄砲鍛冶の家に生まれた国友一寛斎が、飛行船や潜水艇まで作ろうとし、日本で初めて反射望遠鏡を完成させる話が展開される。からくり仕掛けが好きでしようがなく、好奇心旺盛な一寛斎と物づくりに魂を込める国友の職人たちの、「夢をまことに」と手繰り寄せる日々…。
努力が報われる
……とは限らない
けれど
努力をしているそのときこそ
しあわせ で たのしい とき
《夢には力がある。強い力がある》
至幸のときは その力の中にある
冊子にはこんな言葉が並んでいた。
私自身にも、ちょっとしたとっかかりがつかめて、救われた思いで一息ついたことがある。
《夢には力がある。強い力がある》。希望があります。よい「春」となりますように。