
縁先の椿の葉一枚一枚の上に、ふわっとわたのような雪が積もった朝を迎えた。ゴミ出しの集積場所から眺める枯野も、一面の薄化粧。
滋賀県長浜市では71センチ、余呉湖で53センチの積雪だとテレビで報じられていた。こんな時にこそ、あの高月の渡岸寺の観音さまをたずねてみたいと、憧れにも似た思いが膨らむ。
湖北路の十一面観音
雪なかにこもりてひそと笑み給ふらむ 小西久次郎
毎年のことだが、思うだけ…。第一に、足がない。車は10年続けた夜間の仕事を辞めて以降だからもう20年ほど、冬もタイヤ交換せずに暮らしている。雪道は走らないし、走れない。そして電車も止まる。
「湖西線ちょっと春風遅れます」は、どこで見かけた、どなたの句だったか。湖北を訪れるには、春風も、折々の強風、大雨、もちろん雪とあらば、西も東回りでも電車は要注意となる。案の定というか当然この大雪の中、訪ねるにも術はない。
あたりを埋め尽くした雪の美しさを眼裏に描いたのは、坂上是則の歌「…吉野の里にふれる白雪」だったなと思い出す。百人一首にもあるが、私の将来への道案内いただいた恩師の授業での、1回こっきりのひとコマでのこと。
冬はやっぱりどこかで雪を待ち望んでいるのではない?
こんな寒い日は、何もしないでじっとしていたいが、あと何日…。
午後からひと歩きに出た。トンビがいっぱいだった。