部屋の窓から外を見て、
♪窓をたたく僕に 誰か手を振り返して!
誰もいない世界ってわかる? 友達がいない、居場所がない…と孤独感の中で殻にこもる高校生エヴァンが歌っている。
彼はセラピーを受けていて、その宿題で書いた自分宛の手紙を同級生のコナーに持ち去られてしまう。コナーは妹からも「クレイジー」と言われるほど言動は不安定で問題多く、周囲から浮いているような存在だった。そのコナーが自ら命を絶った。折りたたまれた“Dear Evan Hansen”と書き出された手紙をポケットに入れたまま。
エヴァンを息子の親友だったと思い込んだ両親を悲しませないようにという思いから、友達のふりをして思い出の作り話をする。優しさから出た嘘だった。作り話は反響を呼び、やがては思いがけない方向に進んでしまう。そしてエヴァンは勇気を振り絞って…。
素の自分を隠して、匿名で生きている子は多い。明るい笑顔を見せたあとで、うつむく子がいる。
♪「君は一人じゃない」 You are not alone.
まわりを見回してごらん 手を挙げてごらん
「誰か、見てくれる人がいるよ!」 You will be found!
孤独じゃない場所があるよ。
若者に限らない。歳を重ねるにつれても、語る相手、語る場所がないというのは誰の老いにも訪れうること。健康でいればなおさらのこと、寂しさ度は高まるに違いない。
素のままではいずらくもあり、お付き合いの中で多少は装いながら、名もなき人生を大切に生きている。誰かが見ていてくれる。背中を支えてくれる、そんな手の温もりが感じられれば、それぞれの居場所で心を尽くして生きていけそうだ。人の心を汲みあう、やさしさを持って。
空也上人ではないが、「善友(ぜんぬ)の交わり。お互いに心を結び合って生きていこう」
♪君は一人じゃないよ