京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

むらさきなるもの

2024年04月28日 | 日々の暮らしの中で
清少納言は『枕草子』(88段)で、「めでたきもの」に
「色あひふかく、花房ながく咲きたる藤の花の、松にかかりたる」をあげ、
「花も絲も紙もすべて、なにもなにも、むらさきなるものはめでたくこそあれ」と賞賛する。



淡い青味のある紫色の花房を垂らして、しとやかに優美に咲く藤の花。
淡く澄んだ紫色は、平安人の美意識にかなう〈色の中の色〉であったと。


賀茂川沿いに少しばかり奥へと歩いて行くと、ヤマフジが目に入る。
丹精された藤棚の美しさもよいが、自然が見せてくれる姿に出会う楽しみは大きい。
世はゴールデンウイーク。それぞれ自分たちの人生、世界を大切に、あれこれ心をつくした工夫の中で過ごしているのだろう。
夏日を記録した京。昨年より19日も早いと報じていたが、晩春を彩るヤマフジを訪ねた。


路傍はシャガの花が咲き乱れ、オドリコソウは踊り子が隊列を崩し、離脱者あり。
移りゆく季節はとどめようがない。

わずか小一時間ほどの散策だが、なにやら静かな充実感が…。
コメント (6)
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