つつじ燃ゆ土から色を吹き上げて 上野章子
父は、わたしの誕生記念に躑躅を植えてくれていた。
挿し木で丹精していたものを、何代目なのかはわからないが嫁いだのちにもらい受けた。
何の変哲もない、ありふれた花ではあっても、庭に咲くのを見れば父を思い出すことはある。
椿、木蓮、彼岸桜、海棠、ドウダンツツジと庭木の蕾が大きくなって、開花を心待ちにして
いること。 ツツジにサツキ、4、5、6月は楽しみです。
朝には母さんとウグイスの美しい声を楽しんでいます
などとS57年4月4日付の手紙にしたためられている。
変わらず平穏な日々を送ってくれていることに安堵していたのを覚えている。
父は筆まめだったが、母からの手紙は少ない。あまり家を空けない母だったから、友人たちと日帰りで遊びに出かけることが増えた様子を喜ばせてもらっていた。
手紙類を少しずつ処分しているけれど、なかなか思い切れずに出してはしまいを繰り返す。
色ものが少ない庭にあって、ツツジのあざやかな色が目を射る。
ひとり尼わら家すげなし白つつじ 芭蕉
今日はアニメ映画『歎異抄をひらく」の上映に誘われていたが、ずうっと前に観ていたこともあって、またの機会の同行を約して断ってしまった。
その会場の最寄り駅が、東西線の蹴上(けあげ)。
地下から地上に出るや前方蹴上浄水場の山の斜面一面に白や赤や紫紅色のツツジが咲き満ちる。
まなうらに思い浮かべながら、映画の感想を聞いてみたいなと思っているところ。