京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

この世のものじゃなか

2023年08月31日 | 日々の暮らしの中で
昨日も今日も、朝から蒸し暑い。

子息・上野朱氏が綴った『蕨の家』で両親・上野英信と晴子さんの想い出などを拝読した。
晴子さんの夫との会話に見せる、“言の刃”の切れ味の鋭さにスカッ! そしてクスッ!
やはりもひとつ、どうしても英信氏自身の言葉に触れてみたくなる。

自ら労働者として生きようと炭坑に飛び込み、筑豊の中小のヤマの坑内労働者たちの極限状況を内側から追及した記録文学。
『追われゆく坑夫たち』(上野英信)を求めて、河原町三条のMARUZENに行ってみた。


「地獄の炎であぶられるような悲惨」と葉室麟氏が評している(『読書の森で寝転んで』)。


さまざまな思惑が渦巻く石見の銀山町を舞台にした小説『輝山』(澤田瞳子)を思いだす。
間歩(坑道)で鉱山採掘に当たる男たちがこぞって罹患する病を気絶(けだえ)という。
【地中の毒気やそこここの壁から沁み出す水気、更には間歩に持ち込まれた螺灯(らとう。サザエの殻で作った燭台)の上げる油煙や採掘時に出る粉塵を吸い込むうちに罹るもので、これを患うと咳を繰り返し、煤の如きものを吐いた末、10人のうち9人までが死に至るという。40まで生きられぬ境涯で、短い命を終える】
銀を産むことのみが課せられながら、それぞれの場所で懸命に生きた者たちが描かれていた。

小説とドキュメントだけれど…。


明日の花の蕾が膨らんでいる。
心なしか秋の気配を見せる雲が広がる夕べ。


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