京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

文ちゃん

2023年06月18日 | 日々の暮らしの中で
滋賀県出身の日本画家・小倉遊亀(ゆき 1895~2000)の展覧会で買い求めておいたポストカードで、姪っ子家族に宛ててひと言ふた言、三言ほどしたためた。

言葉がなくても物語が伝わる。
楽しくあれこれ思い巡らすことのできる「径」と題したこの絵がとても好きだ。


犬は鼻先で女の子の背中をちょんとついて、足取りのなんと軽やかなこと。お母さんに合わせるかのように傘を高く掲げて足並みをそろえ後に付いて歩く女の子も愛らしい。
こうした時間がいつまでも続くといい。でも家族として過ごす時間は少ない。日常のささやかな幸福感を受け取りながらも、ちょっとしたさみしさも覚えながら眺めてしまう。
どれだけ見ていても見飽きることがない。

弟の3人娘の末っ子は、大学受験を控えた12月初旬に父親を亡くした。農学部を目指す娘だった。結婚と同時に夫の実家のある関西圏で暮らすようになったことから、行き来に今までにはなかった親密さが生まれた。

「なんとなく女の子が生まれそうだったでしょう?」
義妹の朗らかな声が思い出される。
初孫を抱くことができなかった弟に、私は家のお内仏で手を合わせた。
「おめでとう。また女の子でしたね」

この子は小学校2年生となった。下もやっぱり女の子で、幼稚園の年長さんだ。
この絵を見て、どんなおしゃべりをしてくれるだろうか。

一人ぐらいはお父さんと同じように文章を書く人になってほしい。そんな思いを込めて義妹が “文ちゃん”と名付けたと聞いている。
思い出したときに、格別な用もないのに、私は文ちゃんに文を送っている。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 風が吹く | トップ | 等伯の墓に参る »

コメントを投稿

日々の暮らしの中で」カテゴリの最新記事