京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

風が吹く

2023年06月16日 | 日々の暮らしの中で
「曇りふたがる」日々も中休み、雨上がりのわりに風が爽やかに吹き抜ける。
大物の洗濯をしている間に本堂も庫裏も窓や戸を開放してまわる。はては押し入れや戸袋にも手を広げるから「茂るままなる」草などには当然目をつむる。
洗濯物を庭に広げ、掃除機をかけて拭き掃除。

こんな日の営みは、代代の女たちによってきっと同じように繰り返されてきているのだろう。
梅雨明けを待つ心持ちなど、昔も今も変わるものではないと思いながら、いただきものの田中長さんの奈良漬けを噛みしめお茶漬けをすする昼餉。


夕飯の時間になると「とーふ とーふ」とラッパが聞こえてくる。「こだわりのおいしいおとうふはいかがですか」
と、ああ今日は金曜日だと必ず思うのだ。

豆腐屋さんのラッパに乗って、葉室麟さんが『豆腐屋の四季 ある青春の記録』(松下竜一)について書かれた、読んで間がないエッセイを思いだした。
松下竜一さんは大分県中津市で家業の豆腐屋を継ぐかたわら作歌を始めた。

「松下さんの短歌は根底に何ごとかへの怒りを内包している」
「短歌として洗練され、研ぎ澄まされた言葉はたとえ、ささやかでも風なのだ。風はたゆむことなく世の中を変えていく。だから、一人の若者が言葉によって何ごとかを成そうとした勇気を大事にしたいのだ」

この世はさまざまな風が吹く。
風を通して、家空間の肌触りもよくなった気がする。

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4 コメント

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Unknown (naotomo3451)
2023-06-16 22:46:55
こんばんは。
「豆腐屋の四季」随分昔に読みました。
後に、緒形拳さんがドラマで演じられたのも、視聴しました。懐かしく思い出しました。
いつも、貴ブログで色々な事学ばせて頂いています。  なおとも
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「懐かしく」 なおともさん (kei)
2023-06-17 11:31:14
こんにちは。
昨日に引き続き今日も晴天。真夏日になるようです。

原作にドラマもご存じなのですね。
葉室さんもこの文章を書かれるにあたっては、懐かしいということで選ばれた一冊のようでした。
お豆腐屋さんでまず思い出すのは山本一力さんの『あかね雲』でした。

読みかじったり聞きかじったりしたことですのに、拾い上げていただけることがあるのは光栄に思っております。
コメントありがとうございます。
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「曇りふたがる」 (Rei)
2023-06-17 20:55:57
古語辞典を持っていない私なので
理解できないことが多くてごめんなさい。
松下さんはお豆腐や歌人ですね
中国に「臭豆腐」という食べ物があります。
発酵食品の一種です。
物は試しと手を付けましたが
食べられませんでした
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豆腐 Reiさん (kei)
2023-06-18 10:26:16
暗い雲がいつ切れるかもわからないまま空をふさいでいましたが、
この数日は晴れ間が戻って、真夏日に。
これはこれで暑くてたまりません。

つつましやかに生きる市井の若者の心も波立つ日々は当然あるわけですね。
〈悩み抜きヘルメット持たず佐世保へと発つと短く末弟は伝え来〉と松下さん。
学生運動に参加していた弟が思いだされました。

「臭」という文字からしてお豆腐のイメージを損なうようです。
豆腐もお豆腐屋さんも、一面からだけでは見足りませんね。
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