なかなか新しい記事を書く時間が取れなくて、過去記事をアップすることが多くて申し訳ありません。
「フロー」に関する記事をもう一度読みたいという声をかけていただいたので再アップします。
その前に最近いただいたコメントでうれしかったものをこちらに貼らせていただきます。
(コメント欄で埋もれてしまうと嫌なので)
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ご無沙汰しております。以前算数教室などでお世話になった娘も今日中学校を卒業です。
思考タイプと先生に教えていただいた娘は、その後メキメキと思考タイプを突き進み(笑)受験勉強には、まったく興味をみせず、中学になってからは、哲学書や思考実験の本を読みふける日々でした。
その娘は、高校受験をどうするかギリギリまで、悩んでいました。大学には行きたいものの、大学受験のためだけの勉強を3年間も費やすことに嫌気がさしているようです。
まさに知識を詰め込みすぎて、自由で柔軟な思考をする余地がなくなることに疑問を覚えたのでしょう。
私も仕事場で子ども達を見ていても、子ども達が自由に思考でき、挑戦し、失敗できる機会が年々減っていっているのを実感しています。
これから、グローバル化やAI化が進む未来で、答えをひとつと決めつけず、あらゆる可能性を考える力、また、、考える機械に『何を』考えさせるか?を考える力が必要になると感じています。
子ども達がのびのびと自由に思考の羽を羽ばたかせる世界を願ってやみません。
娘と「小学校の道徳の時間、せめて半分哲学にしてくれないかなぁ。楽しいのに!」なんて、話しています(笑)
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上のコメントを読ませていただいて、最近、中学生になった虹色教室の卒業生の男の子と女の子の
親御さん二名からも
「読書に夢中で、哲学書を熱心に読みます」とうかがって、「哲学書?」と意外に
感じる思いとうれしい気持ちを味わっていました。競争よりも
自分の考えをゆっくり練ることを大事にされてきた子たちです。
たまたまなのか、何か共通する下地があるのか、好奇心がそそられました。
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ずいぶん前のことになりますが、虹色教室では『ピタゴラスイッチ研究部』と
いうクラブを作って、自分で考えたアイデアを競いあうことをしていました。
競いあうといってもそれぞれの子の自分のアイデアですから、その子の個性が強く出て、
電気やモーターを使った仕掛けに熱中する子、音の出る仕掛けばかり作る子、
ゴールに凝る子と興味の方向が異なります。
優劣決めがたい互いに切磋琢磨する面白い研究報告になりました。
私は基本的に、材料の調達と、『フロー状態』が起きやすいような環境を
作ること以外はあまり手を出さないようにしていました。
「そんなものを使うの?」という子どもならではの変なアイデアが、
すごい動きを生み出すこともよくありましたから。
また、そうした遊びの興奮のあるうちに、レッスンの後半は算数や
数学の学習に集中させるようにしていました。「たくさん学んで、
もっと高度なことができるようになりたい」という気持を引き出したかったからです。
フローとは、人が時間も忘れて無我夢中になって何かに没頭しているときの
精神状態をいいます。
心理学者のミハイ・チクセントミハイによって提唱されました。
やってることにのめりこみすぎて、行為と意識が溶けあうような感覚です。
子どもにフロー状態を体験させるには、管理しすぎず、
成果を求めず、それぞれの子が自然な状態で自分に自信が持てるよう支えることが大事です。
また、友だちと協力しあって同じ目標に向かって努力するときも、
それぞれひとりひとりの子が、
自分自身の好奇心や探究心に突き動かされて取り組めるよう支援します。
この当時、5歳だったピタゴラスイッチの研究部員さんたちは
勉強中もフローの状態を作り出すことができるように成長してきています。
この研究部は、アイデアマンの主力メンバーが受験に突入したことと、
幼い子たちが『化学実験』ばかりやりたがる時期が続いたので、半休部状態のまま
今に至っています。
それが最近になって子どもたちの間に、「面白い崩れ方をするドミノが作りたい」と
いう気持ちが生まれてきたので、ピタゴラスイッチ研究部、復活しそうな気配です。
ピタゴラスイッチ作品のアイデアは、
これ以外にも面白いものがたくさんできたのですが、きりがないのでこれくらいで……。
これは昨日の小1生たちがドミノで遊んでいる様子です。
最初に円の上にドミノを並べてみて面白かったので、
もうひとつ作って、8の字を一筆で書くように倒れるようにしたいと思いました。
が、台にしている円形の板は周りが丸まっていて、
思うように交差しておくことができません。
そこで、8の交差する部分にあたるドミノを吊り下げる作戦に出ました。
よいアイデアではあったんだけど、これは失敗。
すると、ひとりの子が、この吊り下げたドミノを使ったゲームを思いつきました。
下にドミノを重ねておき、ひもをつけたドミノを上から落として
いくつドミノが崩れるか競うゲームです。
改良を加えて棒を1本足すと、カーブを描いてドミノが降りて来て
積んだドミノをはじくゲームが完成しました。
子どもたちが次々にアイデアを出しながら、自分たちで工夫しながら遊ぶようにするには、
子どもたちのひとりひとりが『フロー状態』に入っていけるように
環境や大人と子どもの関係を整えることが大切です。
おまけーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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の記事を読んだ方からこんな質問をいただきました。
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『フロー状態』が起きやすいような環境を作ること
→この点について家庭でできること、親としてできることを教えていただけますと
嬉しいです。うちの子(もうすぐ3歳です)は非常に気が散りやすいタイプで、
遊びが長続きしません。おもちゃも次から次へと変えていきます。もう少し集中して
遊び込めないものか・・・と悩んでおります。よろしくお願いします。
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3、4歳の子たちは遊びが長続きせず、おもちゃを次々変えていくことはよくあります。
一つの遊びで遊び込むことができるように導くために、次のような点に注意して
関わっています。
① それぞれの子の敏感期に注目する。
手作業で夢中になること。知能面で敏感になっていること。
② その子の好み。個性。
色、形、作業の好み。頭の使い方の個性。遊びの好き嫌い。
③ 最近の出来事。その日、関心を持ったものなどに注意する。
体験したことを遊びに取り入れる見本を見せる。
④ 遊びのさまざまなシーンで敏感期の活動を満喫できるようにする。
今日、レッスンに来ていた3歳と4歳の★ちゃん、☆ちゃんの遊びを例に挙げて、
もう少し具体的に説明させていただきますね。
教室に着いた当初、★ちゃんも☆ちゃんも、
次々と遊びを変えて落ち着かない様子でした。
☆ちゃんは椅子が好きな子で、2歳くらいの頃も、教室にある子ども用の椅子を
部屋中に並べたり、重ねたりして遊んでいました。
人形劇の劇場を取ってもらいたがったので、☆ちゃんに渡すと、劇場の前に椅子を
並べだしました。
以前、教室で人形劇の劇場を作って遊んだことがあるのを思い出したようです。
虹色教室では、子どもが何か新しい体験をしたときは、それを
おもちゃや工作で再体験できるようにしています。
保育園の発表会を楽しんだ☆ちゃんと発表会の様子楽しんだ日の記事
この日は2つ年上のお兄ちゃんが主になって、舞台装置の仕掛け作りをするのを
見るのと、お人形を椅子に座らせていくのが☆ちゃんの仕事でした。
それを思い出したのか、☆ちゃんは人形劇場を目にするなり、椅子を並べ出しました。
「もっと椅子がほしい」と言いました。
椅子とお人形を用意すると、どんどん椅子を並べては人形を座らせていきました。
(椅子は100円ショップで購入したグラグラゲームに入っていたものです)
☆ちゃんは真剣な表情で、「先生、前は小さい人が座って、後ろは大きい人が座るよ。
だって、前に大きい人が座ったら劇が見られなくなるから」と言っていました。
幼い子たちは、手と目を協応させて集中してやらなくてはならない作業を、
何度も何度も満喫するまで繰り返すのを好みます。
その子がやりたがる作業をたくさん行える環境を作ってあげることが大事だと
思っています。
また時折、イメージを育てるために、大人が体験を再体験できるような
見本を作ってあげることも必要です。
★ちゃんに、「何がやりたい?何が好き?」とたずねると、「ビー玉」と答えました。
らせんにビー玉が転がっていくおもちゃにビー玉を入れて遊びだしました。
★ちゃんは感覚に訴えることが好きで、こうした遊びをはじめると
いつまでも続けています。
集中しているとはいえますが、こればかりでは発展しない上、知力や想像力をしっかり
使って遊ぶ満足感は得られません。
そこで、★ちゃんが熱中する作業の一つひとつを
次の段階に発展させたり、個々の遊びをつないで意味を作りだしたり
する方法をいくつか提案しました。
上写真の左は、★ちゃんが遊んでいたビー玉がクルクルとらせんに滑り降りていく
おもちゃです。高い位置に滑り台を作って、滑り台から飛び出したビー玉が
らせんに滑り降りるおもちゃの中に入るようにしました。
★ちゃんは放射線状に落下するビー玉の動きに大喜び。
滑り台の高さや位置を調整しながら遊んでいました。
ビー玉がポンッと跳びあがるおもちゃと、受ける道具の組み合わせでも、
十分楽しんだあとで、受ける側の穴を滑り台につないだり、
ビー玉を飛ばす道具を椅子の上に設置して遊びました。
ホースをゴムで椅子につないであげると喜んでいたので、最初は転がして受ける
遊びをし、途中から、それまで作っていた線路に貨物列車を作って、
ホースを使ってビー玉の荷物を荷台に入れて、運んで行くというごっこ遊びをする
ことにしました。
このように敏感期の作業的な活動と見立て遊びがつながると、
子どもはとても長い時間、夢中になって遊ぶことがよくあります。