金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

218:天野純希『北天に楽土あり 最上義光伝』

2021-07-18 15:38:28 | 21 本の感想
★★★☆☆3.5
   
【Amazonの内容紹介】

伊達政宗の伯父にして山形の礎を築いた
戦国大名・最上義光(もがみよしあき)。
父との確執、妹への思い、娘に対する後悔、
甥との戦(いくさ)。
戦場を駆ける北国の領主には、
故郷を愛するがゆえの数々の困難が待ち受けていた。
調略で戦国乱世を生き抜いた荒武者の願いとは……。
策謀に長けた人物とのイメージとは裏腹に、
詩歌に親しむ一面を持ち合わせ、
幼少期は凡庸の評さえもあったという最上義光の苛烈な一生! 

*************************************

kindle unlimitedにて。

最上義光については、伊達政宗サイドに立った
創作物からのイメージがすべてで、
「伊達政宗の母親の兄で、厄介なおじさん」
くらいの認識しかなく、
最上家がどういう運命をたどるのかも
ほとんど知らなかった。

一代記を一冊でやろうとしたために、
イベントの消化がメインで、
合間にちょこちょこ人物を描くエピソードが
入っているという感じ。
オープニングに娘の処刑を持ってきたのは
どういう意図があったんだろう。
復讐は結局なしとげられないわけだし、
復讐できない、ままならない人生を
描いているというには弱いし……。
このオープニングがなければよかったのに、と思うくらい、
機能していないことによる拍子抜け感があった。

どの息子に家督を継がせるか、という終盤のエピソードも、
報復はするんだけども、全然救われた感じがない。
義光死後に最上家がたどった末路もあいまって
なんだかむなしく、もやもやとした読後感。

でも、よく知らなかった人物だったのもあって
話の流れは興味深かった。


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215-217:二宮敦人・土岐蔦子『最後の秘境 東京藝大―天才たちのカオスな日常― 1~3』

2021-07-17 08:24:36 | 21 本の感想
★★★★☆
   
【Amazonの内容紹介】

新潮社の大反響ノンフィクション小説、
待望のコミカライズ!! 
藝大生を妻に持つ主人公は、
彼女の突拍子もない行動を目にするうち、
藝大生に興味を抱き、潜入取材をする事に。
そこで目にした驚きの実態とは……!? 
謎に満ちた“芸術界の東大”のカオスな日常を描く、
抱腹絶倒の探検記。

*************************************

kindle unlimitedにて。

小説版が話題になっていた記憶はあるけど、
コミカライズもされていたのね。
全然「抱腹絶倒」ではないんだけど、
とっても興味深い。
わたしの狭い人間関係の範囲内では、
芸術や音楽に人生をささげるレベルで
打ち込んでいる人がいないので、
始終、別の人生を覗き見ている感じがする。
演奏家って、歳を取ればとるほど
演奏に深みが増してよくなるものだと思っていたけど、
そうとも言えないのだな。
スポーツ選手のように輝ける時期が限られている、
というのに驚き。

コミカライズ担当の漫画家さん、漫画がうまい。
すべてが安定していて、安心して読める。

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214:三崎律日『奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語』

2021-07-16 20:20:19 | 21 本の感想
★★★★☆
   
【Amazonの内容紹介】

本書で紹介する奇書とは、数“奇”な運命をたどった“書”物です。

「かつて当たり前に読まれていたが、いま読むとトンデモない本」
「かつて悪書として虐げられたが、いま読めば偉大な名著」

1冊の本を「昔」と「今」の両面から見ると、
時代の流れに伴う価値観の「変化」と「差分」が
浮かび上がります。
過去の人々は、私たちと比べ、
「どこまで偉大だったか」「どこまで愚かだったか」――。
これらから得られる「教訓」は、
私たちに未来への示唆を与えてくれるでしょう。

【目次】
魔女に与える鉄槌
 ~10万人を焼き尽くした、魔女狩りについての大ベストセラー
台湾誌
 ~稀代のペテン師が妄想で書き上げた「嘘の国の歩き方」
ヴォイニッチ手稿
 ~万能薬のレシピか? へんな植物図鑑か? 未だ判らない謎の書
野球と其害毒
 ~明治の偉人たちが吠える「最近の若者けしからん論」
穏健なる提案
 ~妖精の国に突き付けられた、不穏な国家再建案
天体の回転について
 ~偉人たちの知のリレーが、地球を動かした
非現実の王国で
 ~大人になりたくない男の、ネバーエンディングストーリー
フラーレンによる52Kでの超伝導
 ~物理学界のカリスマがやらかした“神の手”
軟膏を拭うスポンジ / そのスポンジを絞り上げる
 ~奇妙な医療にまつわる、奇妙な論争
物の本質について
 ~世界で最初の快楽主義者は、この世の真理を語る
サンゴルスキーの「ルバイヤート」
 ~読めば酒に溺れたくなる、水難の書物
椿井文書
 ~いまも地域に根差す、江戸時代の偽歴史書
ビリティスの歌
 ~古代ギリシャ女流詩人が紡ぐ、赤裸々な愛の独白
月世界旅行
 ~1つの創作が科学へ導く、壮大なムーンショット
*************************************

kindle unlimitedにて。

ヴォイニッチ手稿と椿井文書に惹かれて読んだ。
いろんな奇書を紹介するのがこの本の目的だった様子。
もともと読みたかった部分については、
新しく得られた知識はほとんどなかった。

でも他の本に関してはまったく知らなかったので、
よい出会いになった。
「世界にはこんな奇書があるよ~!」
と広く浅く紹介してくれるので、
この本で興味を持ったものについて
また別の本を読む、というのが正しい使い方なのかも。
「ビリティスの歌」の話が印象的。

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208-213:最近読んだ本

2021-07-16 11:46:09 | 21 本の感想

すごいな、「茨城」って風土記の時代から
ある地名なんだ……!



やはりセルフパブリッシングなのか。
おもしろい話もあったのだけど、
もう少し構成やレイアウト、校正を頑張ってほしい。







 


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207:安田登『役に立つ古典』

2021-07-15 10:59:19 | 21 本の感想
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

私たちは、あの名著を「誤読」していた。
『古事記』『論語』『おくのほそ道』『中庸』──
代表的4古典に書かれている「本当のこと」とは? 
私たちは何を知っていて何を知らないのか。
古典の「要点」さえ理解できれば
自分だけの生きる「道」が見えてくる。
自分なりの価値観を見出していくために。
古今東西の名著に精通する能楽師による、
常識をくつがえす古典講義!

はじめに──「本当の」古典と出会う
第1章 『古事記』に息づく「日本人」の原点
第2章 『論語』が示す「心」の道しるべ
第3章 『おくのほそ道』に学ぶ「和とユーモア」の視点
第4章 『中庸』が伝える「誠」の力
おわりに── 古典を身につける方法

*************************************

「戦国武将から学ぶ●●」みたいな本とか記事には、
「役に立たなくていいんだよ、古典とか歴史は! 
 無理やり教訓とか引き出そうとするな!」
と反発を抱いていたわたし、
これもそういう本だと思っていた。
タイトルから予想した内容とはまったくちがった。
なんとも知的好奇心を刺激してくれる一冊。

”「死」という漢字が伝来したとき、
日本人には「死」の概念がなかったのではないか?
なぜなら「死」には訓読みがないから”
という話がとてもおもしろい。
「死ぬ」と「死す」の違い、なるほど~。

“『論語』の「四十にして惑わず」の意味も、
本当は違ったのでは? 
なぜなら孔子の生きていた時代、
「惑」という漢字は存在しなかったから”

と、もともとの孔子の発言を、
当時存在した漢字から推理していくのも楽しい。

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206:三角洋一 校訂・訳注『石清水物語』

2021-07-14 12:53:40 | 21 本の感想
三角洋一 校訂・訳注『石清水物語: 中世王朝物語全集5
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

武家の伊予守が主人公の異色作。上下二巻から成る中編。
成立は後嵯峨院時代とされる(在位1243~46、院政~72)。
父大臣に知られず、常陸国で生まれ育ったヒロイン木幡の姫君は、
兄妹とは知らぬ秋の君の接近、後見役の伊予守との密通、
入内取り止め、老人の中務宮との結婚、
帝による略奪という曲折を経て女御にまで昇り、
伊予守は出家する。
男主人公の側から見れば悲恋遁世談で、
女主人公の側からいうと女の出世を描いた物語。

*************************************

鎌倉時代の物語。
「主人公が武士。ひとりの姫君をめぐる
 恋敵同士の男たちがなぜかBL展開」
という噂を聞いて読んでみた!

栞に解説がついていたのだけども、
モデルとなった人物について、

男主人公:木曽義仲、源通親
女主人公:松殿基房の娘・伊子、承明門院在子

とされていてびっくり。
最近、興味しんしんの人々。

さて、本編について。
「主人公は武士とされているけど、
 描かれ方は公家とそうかわりない」
みたいな評を見かけたことがあったけど、
わりとしっかり武士してる。
そもそも、姫君に恋したのが、大番役で上洛したときのこと。
東国の兵乱にも出兵してる。
ただ、「イケメンだからすべて許される」みたいなとこが
公家の価値観なのかもね……。
冷え切った関係の妻も「イケメンだからいいわ」みたいな。

あとね、BL展開については、正直、
「憎い恋敵なのに、何? この気持ち……」
みたいなのを期待してた!!
違った!!
「姫に言い寄ってたけど、実の妹だとわかって
 恋をあきらめざる得なくなった公達(秋の君)」と
「血はつながってないけど、父が姫を養育していた縁で
後見人となった武士(鹿島)」が姫を介して出会い、
初対面で好感度マックス(互いにイケメンだから……)。
公達のほうが
「なんか好きになっちゃった! そばにいて!」
って言いだし、主人公の鹿島も、
姫と関わりを持ちたい下心はあったにせよ、
秋の君に惹かれる気持ちもあって、
何の葛藤もなくBLな世界に突入。
鹿島「姫のこと諦めてないんだろうな……」
秋の君「ひょっとして密通した……?」
と薄々感じつつも、ぶつかり合うことなく、
割と平穏に関係が維持されている。

「イケメンだから許される」展開は、他にもある。
「だれかと密通した」というお告げによって
入内が取りやめになった姫が、
老人の中務宮に嫁がされるんだけど、
無理矢理関係を持った鹿島を嫌がっていたのに、
老人の夫に比べたら若くてイケメンだったといって
急に評価が上がってしまうんである。
この中務宮、本当にかわいそう。
口では言わないけど、みんな彼を馬鹿にした
振る舞いをするんだもん。
「老人なのに若い後妻を望んだ」のがよくないのか?
でも求婚を受け入れたの、姫の父じゃん。

養女だったのに左大臣の後妻になった女性が、
女性としての評価はあまり高くないんだけど
実務能力に優れているのは、おもしろい。
当時、女性の性格として良しとされたのは、
「おっとりしている」
「恥じらいを持っている」
なんだな。

意外にしっかりとストーリーに起伏があり、
おもしろかった。
ただ、古典文学の常で、名称が一定しないので
一読しただけでは登場人物やその関係が
なかなか頭に入ってこない。
この本では、家系図と現代語訳、梗概、すべてで
登場人物に番号が振ってあって、
名称が変わっても同一人物であることが
わかるように工夫がされている。


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204-205:手塚治虫『火の鳥5・6 鳳凰編』

2021-07-14 12:38:35 | 21 本の感想
手塚治虫『火の鳥 5・6 鳳凰編』
★★★☆☆3.5

【Amazonの内容紹介】

人の世のつつましい営みをあざ笑うかのように、
権力はいつも弱者のもとから幸せを奪い去っていく……。
平城京の都を舞台に、幸福を追い求める男たちが
描いた火の鳥の夢とは!?
巨匠が描く大長編シリーズ。好評の第5弾!

*************************************

1~4巻の内容はしっかり覚えていたのに、
この鳳凰篇、ほとんど記憶にない……。
速魚のくだりだけうっすらと覚えているだけ。

橘諸兄と吉備真備、藤原仲麻呂と権力が
移り変わっていく中で、別々の道を歩みつつも
たびたび交差する我王と茜丸の人生。
良くも悪くも人は変わる、ということを
描いていたように思う。
善人だった茜丸が、芸術家として認められて
地位を上げたことで
どんどん嫌な人になっていくのが悲しい。

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196-203:最近読んだ漫画

2021-07-14 12:36:22 | 21 本の感想
いずれもkindle unlimitedにて。


気のせいか、BL臭がする……。
絵はきれいだけど、漫画よりイラストの絵、
という感じがする(動きがやや不自然)。



作者さん、基本スペックが高いのでは……
しかも一点突破型ではなく、複数の強みがあるタイプ。
医者の仕事や生活について垣間見られて興味深い。


 信濃川日出雄『山と食欲と私 4巻・5巻』

ストーリーに起伏が少ない回もあるんだけど、
それが「つまらない」にはならない
不思議な好感度の高さ。
他者を強く否定しないからなのかな。



え、なに、おもしろい……続きは買おう。
序盤、
「始まりとは思えない情報処理の仕方……。
 掘り下げずにどんどん話が進んでいくなあ」
と思ってたんだけど、前日譚があったのか。





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大河ドラマ『青天を衝け』#22

2021-07-11 21:03:02 | 大河ドラマ「青天を衝け」
栄一のわくわく異文化体験記、の巻。

お付きの武士が、
昭武にコーヒー持ってきた給仕を「無礼者!」って
怒鳴りつけてコーヒーをスプーンですくって毒見したり、
ダンスパーティで昭武を誘いにきた女の子たちを
「下賤の女め!」って追い払ったりしてるの、
なんか笑っちゃった。
昭武くん、ほんとはダンスしたかったんじゃない?

やはりここでも問題は金……ということで、
費用節約のためにホテルからアパートへ
居を移すことに。
昭武の住まいを契約するにあたり、
「値切ってよ!! なんで値切らないの!」
と憤る栄一、やっぱり商売人なのね。
薩摩の計略にまんまとはまり、
対外的な将軍の権威を貶められたことで
フランスからの借款も得られなくなり、
どうするのこれ……。
国内にいるときよりも海外にいるときのほうが
経済的な不安は打撃だよ。

【その他いろいろ】

・外国語もしゃべれるよう勉強した慶喜、
 すごいね。

・慶喜から実権を奪おうとしたのに失敗し、
 ふてくされた久光。
 写真撮影のシーンがギャグになっていた。
 残っている実在の写真の表情にからめての演出、
 おもしろかった。
 久光以外の3人がうきうきしてるのも可愛い。

・予告の内容が盛りだくさんすぎる!

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193-195:田村由美『ミステリと言う勿れ1~3』

2021-07-11 15:29:46 | 21 本の感想
田村由美『ミステリと言う勿れ(1)~(3)』
★★★★★

【Amazonの内容紹介】

話題沸騰★青年・久能整!ついに登場!!

『BASARA』『7SEEDS』の田村由美、
超ひさびさの新シリーズがついに始動!! 
その主人公は、たった一人の青年!
しかも謎めいた、天然パーマの
久能整(くのう ととのう)なのです!!
解決解読青年・久能 整、颯爽登場の第一巻!!

冬のある、カレー日和。
アパートの部屋で大学生・整がタマネギを
ザク切りしていると・・・警察官がやってきて・・・!?

突然任意同行された整に、近隣で起こった殺人事件の
容疑がかけられる。
しかもその被害者は、整の同級生で・・・。
次々に容疑を裏付ける証拠を突きつけられた整は
いったいどうなる・・・???

新感覚ストーリー「ミステリと言う勿れ」、
注目の第一巻です!!

*************************************

「へんな髪型の主人公がめちゃくちゃしゃべりまくる」
という程度の前知識しかなかったのだけど、
予想以上に面白かった。
ドラマ化もしてたのね。

変な髪型は作者の計算なのだということがよくわかる。
この性格としゃべり方で、普通のイケメンだったら
ただのいけ好かない野郎だもん。
この容貌だからこそ愛嬌が生まれている。
そして主人公がこうだからこそ、
ゲストキャラに普通のイケメンが登場したら
即怪しい。

巻の終わりの引きが強くて、
ベテランらしい安定した面白さ。

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