急性期の頭部外傷で、十数分~数時間後から徐々に意識が低下し、そしてそのまま亡くなってしまう病態は「急性硬膜外血腫」である。頭部を強打すると、脳震盪という数分間の一時的な意識消失がある。これは数分後にまた自然と意識が戻る。しかしこの時、頭蓋骨に骨折がみられた場合、頭蓋骨の裏側に密着している細い動脈まで損傷される場合がある。この動脈損傷から徐々に頭蓋骨の内側を覆う「硬膜」と頭蓋骨の間に血液が溜まってくるのである。そして徐々にその出血が広がってくると脳を圧迫してくるので、経時的に徐々に意識が低下してくるのである。そして出血が進行すれば脳が血液の塊に押しつぶされて、いわゆる「脳ヘルニア」を起こし死亡するのである。救命するには意識が徐々に低下しているうちに手術で血腫を除去しないと難しい。完全に脳ヘルニアを起こしてからでは間に合わないのである。つまりこの意識清明なうちにこの病態に気が付くかどうかである。