吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

悪魔の証明 その4

2017年04月13日 06時04分26秒 | 日記
 もし「有意差がない」(降圧薬を飲んだA群と、飲まなかったB群の降圧効果に差がない)と出たなら、「この薬は効かない」と考えがちであるが、でもそれは誤りである。医学論文の結論としては「効果があるのかないのかどちらともいえない」という解釈が正しい。逆は真にはならない。効果があることを証明するための統計学的手法を用い、もし有意差が出れば、「薬は効く」と解釈してよい。しかし有意差が出ない場合であるが「薬の効果がない」という仮説の証明をしていないので「効かない」という保証をしてはならないのである。それでは薬が効かないという陰性証明は可能かというと、そのような統計学的手法は存在しないため結局、「ないことの証明」とは不可能であるわけである。
 今回政治の世界の問答で安倍首相が用いた「悪魔の証明」という言葉は、まさに医学論文で有意差が出ない時のおかしやすい思考過程に似ていると感じたのである。でもまあ、「病気がないことを証明」してくれという患者は過去2名のみなのでなんとか切り抜けたが、今後増えたらどうしようか? 陰性証明はとにかく困る。まさに「悪魔の証明」なのである。