吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

鼻の整形手術後に死亡、聖路加国際病院側に600万円賠償命令…東京高裁が医師の過失認定 その3

2022年04月08日 06時09分26秒 | 日記
 このような頻度の低い合併症でも起こらないことはないが、その後の各種の観察やモニターですぐに気が付くべきであり、再挿管が試みられれば大事に至ることはない。よほど気管内挿管が困難である高度の肥満者、口腔内変形、下顎肥大などがあったのかもしれないが、それならば術前に、あらゆる挿管法の選択が検討されているはずである。挿管がきちんとできるかどうかは麻酔医の腕の見せ所であり、その病院の麻酔科のレベルの問題でもある。
 もう一つ気になるのは、賠償金が600万円と「安い」ことである。これは高額になりやすい医療事故の中では高いほうではない。特に言いがかりや冤罪とでも思われるくらいの不当な判決で巨額な賠償金判決がでるような昨今である。今回、詳細な報道はないが、誤挿管による死亡はほとんど言い訳ができない。そこにきてこの賠償金の額は「え? あれっ安い?」と言えるくらい低額なのである。よっぽど何か原告側の落ち度か、あるいはよっぽど不可避な挿管困難理由でもあったのだろうか?

鼻の整形手術後に死亡、聖路加国際病院側に600万円賠償命令…東京高裁が医師の過失認定 その2

2022年04月07日 06時27分02秒 | 日記
 まずは美容目的の形成外科手術を聖路加病院で行っているとは知らなかった。「結婚前に鼻の形を整えるため・・・」とあるので、疾病によるものではなく整容目的なのだろうか。
 さて全身麻酔時における食道への誤挿管であるが、これは気管挿管時に注意しなければいけない合併症である。もちろん頻度は高くはないが起こりうるミスでは有名なものであり、これを起こさないよう、確認のための手順・方法はいくらでもある。
 例えば医療機器などではCO2モニターとかパルスオキシメータだとかでも判断できる。近年ではそれらモニター装着は大きな病院ではルーチン化されているので使用されているはずである。
 昔自分が麻酔科の時はこれらモニターがなかった時代なので、患者の呼吸や血圧、脈拍、または血液ガス分析などで患者から目を離さないよう厳重に注意された。
今回の事故は、よほど口腔、下顎の解剖学的変形でも存在しない限り、起こりうる頻度は極めて低い。しかしながら責任は麻酔医にある。

鼻の整形手術後に死亡、聖路加国際病院側に600万円賠償命令…東京高裁が医師の過失認定 その1

2022年04月05日 05時58分33秒 | 日記
3/23(水) 21:46配信 読売新聞オンライン
 聖路加国際病院(東京)で鼻の整形手術を受けた30歳代の女性が植物状態になって死亡したのは医療ミスが原因だとして、両親が病院側に計約1億1500万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が22日、東京高裁であった。岩井伸晃裁判長は医師の処置の一部に過失があったとし、病院側に計600万円の支払いを命じた。
 判決によると、女性は2011年2月、結婚前に鼻の形を整える手術を受けた。その後、呼吸を確保するため気管にチューブを入れる際、誤って食道に挿入されて植物状態となり、13年1月、脳死による多臓器不全で死亡した。
 1審・東京地裁判決は請求を棄却したが、岩井裁判長は医師がチューブの挿入を十分に確認すれば、女性が意識障害にならなかった可能性があると判断した。
 女性の母親は23日、東京都内で記者会見し「簡単な手術と聞いていたのでまさか死ぬとは思わなかった。病院のミスが認められたと娘に報告できる」と話した。聖路加国際大は「判決文が届いていないのでコメントは差し控える」としている。

救急隊員の知識不足原因 薬剤投与ミスで千葉市報告 その3

2022年04月04日 06時17分42秒 | 日記
 それにしてもこの報道原稿を書いた記者も知識不足である。誤った報道の仕方はそれこそ誤解を招きかねない。
 記事文中「救急隊員はアドレナリンが、ショック症状を緩和する注射薬「エピペン」の代用になると誤解して・・・」とあるが、アドレナリンはこのエピペンの内容物そのものである。つまり同一薬剤なのである。どうやら記者はそれを知らないで記事を書いているようである。
 ただし病態により使用量や使用方法が異なり、それについては確かに隊員や、その投与方法に指示を出した医師も知識不足である。今回の場合ではエピペンという製品を使わずとも、アドレナリンを0.3ml注射器に吸ってそれを「筋注」すればいいのである。ただしその投与方法は救急救命士には認められていないので医師からそのような指示が出た場合でも「緊急避難的」に施行できたかどうかはまた別の議論になる。

救急隊員の知識不足原因 薬剤投与ミスで千葉市報告 その2

2022年04月02日 05時51分51秒 | 日記
 とても起こりえない話である。過去自分もこの病院前救護制度の設立に関与したことがあるので起こりえないことだと思っていた。まず国家試験を通った救命士であれば現場の救命処置である特定行為が何たるかは当然分かっているはず。次にその処置の遂行方法も実技訓練で当然身についているはず。そしてプロトコール(手順を記した覚書)以外の処置内容についてはその場で消防に詰めている救命医に相談をする約束のはずである。このすべての網を潜り抜ける確率はかなり低いと思うが起こりえてしまった。
 ここは地域のメディカルコントロール委員会で十二分に事後検証をして何があったのかを明らかにする必要がある。

救急隊員の知識不足原因 薬剤投与ミスで千葉市報告 その1

2022年04月01日 06時26分33秒 | 日記
2022年3月14日 (月)配信共同通信社
 千葉市は、昨年10月に食物アレルギーでアナフィラキシーを起こして搬送中の女性に救急隊員が誤ってアドレナリンを点滴し一時心肺停止となった事故について「隊員の薬剤投与への知識不足などが原因」とする調査結果を11日公表した。
 市の第三者委員会の調査報告書によると、救急隊員はアドレナリンが、ショック症状を緩和する注射薬「エピペン」の代用になると誤解して投与。本来は使用が認められておらず、女性の心臓に過度の負担がかかった。女性は既に退院した。
 報告書は、同乗の救急隊長や、電話で処置に関する相談を受けた医師らの対応にも問題があったと指摘。市は再発防止策として、救急隊員だけでなく医師らに対する研修も強化するとした。