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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

みのもんた氏の教訓と歯磨き

2009-06-20 00:43:32 | よしなしごと
 前回はひげ剃りの話を書きましたが、今回は歯磨きです。
 みのもんた氏の出ている番組を好んで観ることはありませんが、何せよく出ていらっしゃるので、TVを付けたらそこに彼がいらっしゃったということはしばしばあることです。

 以下の話はもう10年以上前のことですが、彼の影響力が今よりさらに大きかったと思われる頃のことであります。
 例えば彼が、「ニンジンはビタミンAやカロテンが豊富な緑黄色野菜で」などとおっしゃろうものなら、その日の野菜売り場ではニンジンが飛ぶように売れ、従ってスーパーの食品売り場の担当者たる者、彼の番組のチェックが欠かせなかったという時代でした。

 そんなおり、何気なく昼のワイドショーを観ていましたら、彼がなんの話の脈絡か歯磨きの話をしていらっしゃって、チューブ入りのペースト状のものは研磨剤などが入っていて歯を削るのみだから、ブラシの長さ全体にペーストをべったり絞り出す必要はまったくなく、その二分の一か三分の一で良いのだとおっしゃっていました。

 なるほど、歯を磨くというのは主として磨き方の問題ですから、やたらペーストをどっさり使う必要はないのだというその至極まっとうなご指摘に、目から鱗、鼻から鱈子とばかりに納得いたしました次第です。どうせ後で吐き出すものですし、その方が経済的にも助かるというものです。みのもんた氏もなかなか良いことをいうではないかといささか見直した瞬間でありました。

       

 ところがです。番組の後半になって、みのもんた氏がいささか緊張し、こわばった表情でコメントをし始めたのでした。
 それによりますと、
 「先ほどの歯磨きペーストの件ですが、それには研磨剤のほか様々な薬用成分が含まれていますので、やはり、たっぷり付けて磨いた方が歯にとって良いというご指摘が一部の方からございましたので、先ほど申し上げたことを撤回させていただきます」
 とのことでした。

 その「一部の方」がどんな一部の方かは、いつもの笑顔が全く見られない彼の表情の堅さが如実に示していましたし、何よりもその番組を提供された方のテロップの中にその「一部の方」と思われる方のお名前も明示されていたのでありました。
 その番組提供のメーカーのみならず、その他の同業他社のメーカーさんたちも、「一部の方」共々、局に対していろいろ「ご指摘」をなさったであろうことは容易に想像されるところでした。

 何しろ、味の素の容器の穴を大きくしただけで売り上げが増えたといういう話がまことしやかに語られていた時期だけに、みのもんた氏のお言葉に、「一部の方」が戦慄を覚え、次の瞬間、激怒されたことは容易に想像できるところでした。

 といった次第でその番組は終わったのですが、私は、みのもんた氏が最初におっしゃったことと、その後、「一部の方」がご指摘されましたこととを慎重に秤にかけてみるのでした。
 結論として、「一部の方」のお怒りをかうかも知れませんが、やはりこの際、みのもんた氏の最初のご高説を採用させていただくこととし、以来、それを守り続けてまいりました。

  

 ようするに、まるで北朝鮮のアナウンサーのようにこわばった表情で「一部の方」のご意見を述べたみのもんた氏より、笑顔で、自信を持って話されたみのもんた氏の方を尊重させていただいたのであります。

 歯磨きのペーストを絞り出す都度、みのもんた氏に感謝を捧げ続ける私なのであります。

<おまけ> 戦中戦後は塩のみで磨きました。それさえなかったこともあります。
 そのうちに、缶入りの歯磨き粉というものが出回りました。
 裕福な家は家族それぞれに一缶ずつあったのかも知れませんが、庶民は一家で一缶でした。その缶に家族全員が自分の歯ブラシを突っ込んで粉を付けるのですから余り衛生的とは言えませんでした。

 いずれにせよ、今のように「ナントカ配合」などというペースト状のものをべったりと使うことはなかったわけですが、かといって、当時の方が歯の悪い人が多かったという確証はありません。
 みのもんた氏の、「ペースト最小使用論」を信じる所以であります。

コメント (3)
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