都会は黄昏時が面白い
それは 朝から稼働していた自動マシンがふと停止し
拘束されていた人たちがどっと溢れ出す時間でもある
夕映えに輝く建造物は 機能本意のありようを一瞬停止する
でもって溢れ出した人々は それぞれの消費へと走る
ものを買う 飲む 喰う しゃべる 歌う
明日また自動マシンの前にひき据えられることはこの際忘れよう
人々は黄昏の一部と化し 黄昏がそれを消化する
黄昏は 昼と夜の陰謀を中和し いずれへも溶け込むから
それ自身の不定型な輪郭を失いながら美しい
巨大な人工物が 夕日に照らされると美しくなるのは驚異的だ
人間は馬鹿なものをたくさん作り続けてきたが
それらを世界へ美しく据えようという
スノッブな欲望や配慮をも秘めてきた
目くらましや欺瞞として目を逸らすのは臆病だ
威圧感として恐れおののくのもちょっと違う
人間は自分の身の丈のものしか作ってこなかったし
これらとてけっして例外ではなく われらが身の丈なのだ
人の歴史をゆがみとして葬り去るのは特殊なイデオロギーだ
いつだってそこで人は生き つねに誰かであったのだから
眼前にあるものを虚妄として避けるのもばかげている
それらを享受し尽くすほかに戻るところがあるのだろうか
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