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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

最後のアクシデントはこう収拾した 八五歳ヨーロッパ一人旅

2024-08-20 13:57:39 | 旅行
 ヘルシンキ在住の親切な女性に案内されてフィンエアー(フィンランド航空)の事務所に着くことができた。
 そこにいた女性二人はどうやら私を待っていたようだが、それにしてもその連携は悪く、私に新たなチケットを渡したスタッフもただ渡したのみでそれを言わなかった。付き合ってくれたあの親切なヘルシンキの女性がいなかったら、ここへはたどり着けなかったはずだ。

 彼女たちの説明は概略こうだ。
 1)あなたの荷物は明日の成田行の便の方にもう回っているから今夜はない。
 2)あなたのホテルは空港内で確保されていてもちろん無償。
 3)夕食がまだならそれも無償で提供するが、ただしホテルの食堂はもう閉まっているので、残り物からの選択になる。
 4)お詫びとして、17ユーロの金券を出すのでこれを出発までに空港内のキオスクで使ってほしい。
 5)明日の成田行きの2時間前にフィンエアーのカウンターに来てほしい。そこでジャパニーズ・スピーカー(日本語が話せる者)を配置しておくので、詳細をその者に聞いてほしい。

          
              フィンエアーのホテルへ

 そのうえで、空港入り口付近の同社経営のホテルへ二人で案内してくれた。チェックインを済ませ、さて食事だが、この中から選んでくれと見せられたのは、これまでコンビニで見てきた料理の詰め合わせのようなもの。すごくでかくて食い切れなさそうなものもあるなか、サンドイッチに毛の生えたようなものを選ぶ。

 別途、料金は払ってもいいからワインかビールがほしいと頼むと、この時間はもうアルコール類は出せないとのこと。しかし、キオスクにならまだあるかも知れないという。
 さっそく空港内のキオスクに取って返す。地方のスーパーほどあるキオスクは24時間営業らしい。さっそく酒類のケースに。あった!ワインも並んでいる。しかしである、しかしそれらのケースには南京錠のような鍵がかかっている。

 従業員(ほとんどが北欧以外の外国人)に尋ねる。やはりこの時間はもうアルコール類は販売しないのだという。酒類のケースに取って返し隣を見ると缶ビールがずらりと並んでいる。ノンアルのものだ。それでいいかと思ってみていたら、2.5%の500ml のものがあったのでそれを選ぶ。ついでにチョコレート菓子などの詰め合わせを土産用に買ってほぼ17ユーロを使い切る。

          
              翌朝見たホテルの中庭

 ホテルへ取って返し、真夜中の夕餉だ。概略は掌握できた。ようするに一日遅れでの帰国ということだ。あとは明日、ジャパニーズ・スピーカーに会って、ディティールを確認するばかりだ。

 飲食が終わり、寝る段になって着替えも、パジャマも、洗面具もすべて成田行きの荷物の中だということに気づく。しかしなんともならないままに寝るほかなかった。

 翌日、ヘルシンキ空港の周りを散歩して、昨夜の最後の約束にあった、ジャパニーズ・スピーカーと会ってディティールの打ち合わせをするということでフィンエアーのカウンターに出かける。正面にいた係員に、「昨夜、あなたの会社から言われたジャパニーズ・スピーカーに逢うために来た」と告げる。

      
                ヘルシンキ空港
 
 なんか怪訝そうな顔をした彼女は、私をあるコーナーへ案内し、ここで待てという。そこには車椅子に乗った老婦人の先行者がいて、会釈を交わす。ひたすら待つ。30分ぐらいして案内専門と思われる女性が現れる。そして私に、「あなたの要求はなにか?車椅子が必要なのか?」と尋ねてくる。どうやら私は、先程の女性から特別な要求をもつ乗客扱いされ、そのコーナーへ案内されたのだ。

 そこで私は今一度、「ジャパニーズ・スピーカー」に逢うように言われてきたのだと説明する。すると彼女は、ちょうど私の死角になっていた辺りに視線をやり、何やら合図をしている。そこにはまさに東洋人の顔つきの女性がいて微笑んでいる。案内係が彼女のところへ連れて行ってくれる。
 その登用人はれっきとした日本人で、私は搭乗券を示し、昨夜以来の話を繰り返す。

 彼女はそれらを確認し、改めてそこに書いてあることを説明してくれたが、それは私にもほぼ分かっていたことだ。ただ、彼女の話で貴重だったのは、「あなたの海外旅行は成田で終了する。だから、そこで必ず預けてある荷物を一度引き取ってください。そして、あらためてJALに預けてください」ということだった。

 当初のフィンエアーでセントレアということなら荷物はセントレアで受け取ればよかったので、この説明を聞かなかったら、私は成田へ荷物を置いたままセントレア行きに乗っていたかも知れない。
 やはり、日本語での確認は必要であった。

      
       
                                       いよいよ搭乗 そして機内 以後は熟睡

 あとは順調だった。成田行きの便では疲れ切っていたためひたすら睡眠。気がつけば19日の夕刻の成田。荷物を受け取り、さらにJALのカウンターへ。この哀れな老人のたらい回しを知ってか、とりわけ丁重な応対で、無事夕刻の離陸を果たすに至った。
 
      
      
          
            いずれも成田にて 到着 夕焼け 離陸
 
 そして19時半近く、富士の上空に差し掛かるので写真を撮る。セントレアに着いた頃はすっかり暗くなっていた。

           

 外貨の両替をする。紙幣しか受け付けてくれない。しかし小銭の方は階下のファミリーマートに両替機があって、前は日本円と替えてくれたが、今は電子マネーか各種ギフト券に限定されている。アマゾンのギフト券に変えたら970円分ぐらいになった。文庫本が一冊買えそうだ。

 それらを済ませ、名鉄電車で岐阜へ着いたのは10時過ぎ、腹も減っているが重い荷物を引きずって飲食店へ入る元気もない。タクシーで自宅へ直行。
 出かける際、冷蔵庫をキレイにしていったので食品は何もない。乾麺はあるのでそれを湯がいて、薬味もないまま胡麻ぐらいで誤摩(胡麻)化してかき込む。左手には赤ワイン。なんとも妙な取り合わせだが、これが自分食の良いところ。

 最後に思わぬアクシデントがあったが、こうして無事に帰ることができた今、自分の幸運に祝杯だ。おっと、一方ならぬ世話になったK氏への感謝も込めてだが。

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