つい最近まで頻繁にお邪魔していた某所のドアには、おおきく「あとぜき」と書かれた紙が貼り付けてあった。「ドアはちゃんと閉めなさい」という意味だが、典型的な熊本弁の一つである。某サイトの解説を拝借するなら、「後を塞く」から来ているらしい。先にも書いたが、熊本には古語が随分残されていてこれが現在でも当たり前に使われていて、熊本弁であることを忘れてしまっている事がある。
現在ご紹介している「有吉文書」に、この言葉が登場しているのに気づいて吃驚している。
曰く、「退去末座より引取跡せきニ不及候事」とある。
陽春御間に家老一同が入室するときには、御用人が杉戸を明け座着に及ぶが、「退去の節には末座より引き取り跡せき(跡を閉める)には及ばない」というのである。
この有吉文書は、代々家老である有吉家の手控えの様なものだが、このような文書の中に熊本弁のルーツを見出すとは思っても見なかった。