肥後・南冥 亀井魯・菜交會・兒玉亀太郎・肥後物語・S11年・熊本
筑前の儒者亀井道載が藩主治国の参考にせん為め、肥後藩宝暦の治績を廿六ヶ条に渡り書いたもので、此の種の著書中最も傑出したものである。
本書が肥後に伝わったのは、中山昌礼は寛政元年江戸から送り届けたのに始まるという。肥後流布の書には中山昌礼の跋文があるけれども、筑前
流布の書には天明元年亀井道載の序文があって近世再販したものもある。(肥後文献改題より・津々堂)
肥後・南冥 亀井魯・菜交會・兒玉亀太郎・肥後物語・S11年・熊本
筑前の儒者亀井道載が藩主治国の参考にせん為め、肥後藩宝暦の治績を廿六ヶ条に渡り書いたもので、此の種の著書中最も傑出したものである。
本書が肥後に伝わったのは、中山昌礼は寛政元年江戸から送り届けたのに始まるという。肥後流布の書には中山昌礼の跋文があるけれども、筑前
流布の書には天明元年亀井道載の序文があって近世再販したものもある。(肥後文献改題より・津々堂)
二三三
御留守之時、御分國中之公事可承旨、非仰出候ニ付、
奉窺條々 (忠利公代・於豊前)
「朱書之分ハ御自筆」
「可然候」
一月ニ六日定公事日ヲ五日・十日・十四日・廿四日・廿八
日可承候哉、奉得御諚候事
「可然候」
一公事承候所ハ、月ニ四日ハ村上八郎左衛門、二日ハ米田
與右衛門所ニて可承候哉、奉得其意候事
「尤ニ候事」
一御鐵炮衆・御弓衆・御昇衆・御長柄衆・御仲間衆・御小
人衆・御駕衆、右之衆中申事御座候ハヽ、訴状と口上承
届、非分之者を組頭ニ申渡籠ニ入置、可奉得御諚候哉、
又訴状口上ニて不被聞定時は遂糺明可申候哉、猶又無紛重
罪之者をハ應其科誅伐科申付哉、奉得御諚候事
「おやの與ニ付科申候」
一御無足衆・御門番衆之儀ハ、組頭無御座候間、直々可承
候哉、奉得御諚候事
「公事のまけ勝ハ可有之候、おもき事ハ書付の如く可申渡事」
一御馬廻衆之罪科有之時は、御組頭・御年寄衆え可申渡候
哉、奉得御諚候事
「たいていハ可申候事」
一出世之僧・平僧衆・社人衆・山伏衆なとの儀ハ如何可
有御座哉、奉得御諚候事
「公事ニ不出候ハヽ負けニて候、つミは別儀にて候事」
一重罪を其身覺候て公事聞場へ呼申候共不罷出者御座候
ハヽ、其宿所へ押掛・搦取候か、又は打果候歟ニて可有
御座候哉、其時ハ拙者三人可参候か、又誰々ニ可申渡候
哉、奉得御諚候事
「ことにより候」
一他國之者御國え参り御國之者と申事有之時は、他國之者
非分ニ極候ハヽ、籠ニ入置、其旨本國へ申届可相渡候哉
「先代之事ハ不存候、我々代々の事ニて候、然共何事ニより
可申候、大方ハ右之分ニて候事」
一人沙汰境目論何ニても御先代之事を申物於有之は、年月
を限可承候哉、奉得御諚候事
「としよりともの公事ハ書付にいたしよう」
一御年寄衆之内之者と外の者と申分御座候時は如何御座候
哉、奉得御諚候事
「むつかしき公事ハ日をかへ可申候事」
一私共三人之内相煩申候ハヽ、公事を承候日を延候て、相
煩申者得快氣候時可承候哉、若長病ニて候時は残ル二人
可承候哉、奉得御諚候事
「かつてん不参候事」
一御國之者他え走候て年を經、御國へ歸候時、落所ハ氏神
付たるへく候歟、又は娵入をもいたし奉公を仕候か、走
候刻迄罷在候所へ可付儀ニ候歟、奉得御諚候事
「前代のことく」
一養子之儀、年月被成御切可被仰付候哉、奉得御諚候事
「書物のことく出し候へと免申候、天下の掟如此ニ候事」
一借銀・借米之儀申候得共取沙汰仕間敷候哉、奉得御諚候
事
「月引也」
一奉公人罷出候時、受人を立取替を取、其年々切米時ニ成
走り申候時、受人手前より前給立申時は月ニ可被仰付候
哉、如何可有御座候哉、奉得御諚候事
「見はからい可有之事ニ候」
一奉公人取迯仕候時、受状ニ書付候とて取迯分物を受人ニ
立候へと申候時、身ニ不應ほとの儀ニ候て如何可有御座
候哉、左様ニ御座候ハヽ已來受人ニ立申者有御座間敷候
哉、奉得御諚候事
「如定」
一奉公人走申時、其女子を主人取、其上受人より前給出シ
可申候哉、女子を取遣申候ハヽ、受人ニ申分有御座間敷
候哉、如何有御座候哉、奉得御諚候事
「うけ人と相對次第」
一女子を取遣イ申候ハヽ、其前給ニ當り申候程年月を切遣
可申候哉、又は譜代ニ召仕可申哉、如何可有御座候哉、
奉得御諚候事(ママ)
「科ニよりひそん可有事」
一受人無御座奉公人、女子を捨走申候ニ付、其主人取遣ニ
申候時、自然親類御座候て、前給立可申候間、彼女子歸
可遣由候は如何可有御座候哉、奉得御諚候事
「書物のことくたるへき事」
一奉公人走り申ニ付、受人ニかヽり申時、右ニ受状取申折
節、受人居申所之代官・庄屋又は其主人ニ理り不申候ハ
ヽ、受人之手前かまひ有御座間敷哉、如何可有御座候哉、
奉得御諚候事
「けんくわハ両方成敗也、けんくわニて無之事ハ其様子ニ
より可申也」
一喧嘩出来候ハヽ療法可被成御成敗候、但無理を仕掛候ハ
ヽ其仕懸候者壹人御成敗可被仰付哉、御諚候事、但仕様
ニより先籠舎可申付御諚候事
一他國より走來もの爰元ニて人之下人ニ成居申を、彼主又
ハ親類縁者なと跡より参候て御國ニ罷居其下人を取可申
由申候ハヽ、返し申間敷御諚候事
「ちいさきものハ如此、大き成物ことハ奉行可存候」
一男女ニよらす上りものハ生源寺甚助・本庄庄助ニ相渡可
申御諚候事
「書物定候てさためられぬ事ハ可仕様無之候其ためのひは
ん人ニて候」
元和十年十二月廿四日 (二月三十日改元・寛永元年)