今回の(二二四)御郡方記録書抜は8頁に及ぶ長いものであるため、4回ほどに分けてご紹介する。
(二二四)-1
御郡方記録書抜
一切支丹宗門御法度之儀、従公儀被仰出趣、無懈怠相守候
様ニ、在々所々幷町方男女末々ニ至迄申觸、日本之誓
詞・きりしたんの誓詞ニ血判を仕らせ、きりしたんの影
を踏せ申候、将又、轉切支丹病死仕候時は、五人組、惣
庄屋・村庄屋立合、葬禮規式見届差出仕、旦那坊主葬禮
仕候儀紛無御座との裏書・判形を取差上申候を、ころひ
の根帳ニ引合沙汰仕、田中左兵衛ニ相渡申候、勿論きり
したん宗門御改之御觸状、毎月御郡奉行中へ指廻し、判
形取置申候事
一公儀御高札之寫、於在々所々、毎月其村之庄屋手前より
御百姓中へ讀聞せ、右之趣堅相守申候様ニ可申付通、御
郡奉行より村々庄屋ニ堅申渡、毎月讀聞せ申候事
一壹年ニ両度宛、為横目歩之御使番・歩之御小姓、御國中
在々所々え被差出、在々所々ニ迷惑仕儀共於有之ハ申上
候様ニと申聞せ、申分有之儀は承届書付を受取差上申候
事
一田畑賣買停止之事、従御先代被仰付を以、其分沙汰仕候
事
一田畑・野開共ニ新開可仕所、杭を打、鍬かたを仕候とて
も、其者其年開不申候ニおひてハ脇よりも開可申候、此
段従前々被仰付、今以其通ニ御座候事
一新開之事、御知行取開申分ハ従前々開取ニ被仰付、於今
右之分ニ沙汰仕候事
一御中小姓開も、御知行取同前ニ被仰付候事
一御切米取開之田畑共ニ、御年貢上納被仰付候事
一御惣庄屋開之儀、高之定申分は御百姓並ニ御年貢上納
仕、高無御座畝物之分は、田畑共ニ御年貢出し不申、作
取被仰付候得共、近年ハ御百姓同前ニ御年貢上納被仰付
候事
一寺社方開も、御百姓並ニ御年貢上納被仰付候事
一又内々知行取・同御中小姓開之儀、御知行取・御中小姓同
前ニ被仰付候事
一一領一疋之御奉公望申者之儀、其仁柄御郡奉行吟味仕、
書付を差上申候、其趣御家老中え相達、如望被仰付候者
ニは田畑共ニ開取ニ可仕旨従前々被仰付、今以其分ニ沙
汰御座候事
一在宅仕候御知行取ニは、材木三拾荷・竹貮拾束被為拝領
候、併其郡ニ知行等無御座者ニは不被為拝領候、将又、
在宅所之儀、知行取ニて無御座候ても其所之百姓申分無
御座候得は、御蔵納之内又は何之所へも心儘ニ被仰付候
事
一御家中より在々ニ立山薮・立野等仕來候所、所々ニ大分
ニ仕立申候ニ付、所ニより牛馬之養ニ田のこやし等、御
百姓共勝手悪敷迷惑仕候ニ付、近年ハ御國中御停止ニ被
仰付候事
一飽田・託麻両郡之儀、御百姓之儀ハ不及申、御家中末
々之者、馬草を苅申筈ニ罷成候ニ付、近年は新地・新野
開仕儀御停止ニ被仰付候事
一従他國米雑穀を御國え入申儀、従前々御停止ニ被仰付
候、今以其分ニ沙汰仕來候、併年柄ニより在々差つまり
迷惑仕候砌ハ、其所之御郡奉行迄御断之書物差上申候
を、奉行所ニて致吟味、様子ニ随ひ他國ニて少々商賣仕
候ものヽ代物、其外雑穀少々御國へ入申様ニ申付候事
一鳥類・畜類之儀、何ニても為商賣他國へ出申儀一切御停
止之旨被仰出候、然共音物ニ遣候ハヽ侍中ハ自分之手
形、町方ハ御町奉行手形を出可申候條、夫々之手形次第
ニ御國堺差通可申候、将又、牛馬之儀は各別ニて候間、
如前々沙汰可仕之旨、御家老中より被申觸候ニ付、御郡
奉行・御町奉行幷所々御境目御番中え申觸候事
一御國中之百姓猥ニ他國へ走り申間敷候、申分有之ものハ
自餘之代官所・給人知え立退可申候、左候ハヽ惣庄屋承
届取扱歸参可申付候、其上ニても百姓申分有之は、郡
奉行承届、何之所ニ成とも有付ヶ可申候、百姓同心不仕
を押付歸参申付間敷之旨、妙解院様御代ニ被仰付、今以
其分ニ沙汰仕候事
一他領より百姓幷浪人等走來候ハヽ、其村より即刻惣庄屋
え申達、惣庄屋手前より切支丹宗門改之誓詞血判申付、
御郡奉行え急度申達、則御郡奉行より御奉行所え申上、
帳ニ付置、其者居申度と申所ニ召置、旦那寺を定させ申
候事
一他所より走來者、本所より付届有之時ハ被差歸候、然處
縁付候者ハ不被指歸筈ニ御座候ニ付、御國え殘置申候、
勿論御國之女を女房ニ持候者ハ夫ニ付他國へ被遣候事
一御国境・海道筋ハ不及申、わき道ニても走者他國へ通候
ハヽ、在々庄屋・百姓中・常々心懸押置、即刻惣庄屋え
可申届旨従前々被仰出候、今以其分ニ御座候事
一道路又は何之村ニても喧嘩を仕、互ニ手を負申儀共有之
候ハヽ、双方共ニ其所ニ留置、其趣即刻惣庄屋より御郡
奉行え可申達候、又相手を打果シ立退可申と仕もの於有
之は、其所の者として掛留置可申旨被仰付置候間、相留
候様ニと申聞せ差留置、早々注進可申候、惣て人をあや
まり申もの幷狼藉者ハ在所ニ留置、即刻惣庄屋より御郡
奉行へ致注進、其上ニて御郡奉行より御奉行所え申達候
事