聖句吟味活動は、精神土壌を自由思考土壌に改変するだけではありません。
現代日本の重大問題を直接打開してしまう力も持っています。
最後にこれについて若干述べて本書を終えましょう。
明治維新以来、日本は西欧の科学知識を輸入し続けてきています。
維新を契機に、日本は東洋(中国)の学問から西洋の学問科学に知識の輸入元を切り替えた。
その方向自体は間違っていませんでした。
おかげで国家の近代化を他のアジア諸国に先んじて進めることが出来ました。
だがその知識の根底は今も未消化のままなのです。
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それにはやむを得ない事情がありました。
明治維新を契機に入ってきたキリスト教活動は教理主義によるものだけだったのです。
聖書は邦訳されましたが、翻訳したヘボンとその協力者たちもみな教理主義教会
(長老派とオランダ改革派でともにカルバンの教理主義思想にたつ教会)からの宣教師でした。
そこで彼らは日本で始めた教会で、聖書を抱えながらも自己の教団教理に沿った宣教をしました
(彼らは聖句主義を知らなかった)。
北海道の札幌農学校では、クラークが聖句主義スモールグループを指導して高い成果を上げていましたが、
地方の小さな点のままで広がりませんでした。
西洋の学問・知識は聖句の精神土壌から花開いています。
だからこの土壌の理解なくして知識の根の把握は出来ません。
それには聖句そのものを吟味解読することがやはり必要なのです。
それは礼拝に出て教理主義の説教を聞き、賛美歌など教会音楽ムードに浸っているだけではつかめない。
だが日本人はキリスト教活動とはそういう礼拝のようなものだと思ってきました。
そんなわけで日本人は西欧科学の根底がわからずじまいできているのです。
この状況は、社会科学をも含めて、すべての科学分野に残存しています。
<「和魂洋才!」は悲鳴>
知識の根がわからないままで続けている内に、日本人は悲鳴をあげました。「和魂洋才!」の声がそれです。
それは「西洋の学問科学は学ぶが、日本固有の精神を土台にしていただく」という主旨の思想ですが、
思想と言うより幼稚なスローガンであり、よくいえば」開き直り、悪くいえばストレスによる悲鳴でした。
科学知識や技術を、その精神土壌の理解なくして十全に応用していくことなど出来るはずがありません。
多少は出来ても、底の浅い援用になる。
第二次大戦で日本がゼロ式戦闘機、ゼロ戦を発明し大きな戦果を上げたら、米国はこれに対応する戦闘機を
開発しました。日本はそれに対抗する機種を作れなかった。オリジナリティが続かなかったのです。
その類のことが作戦面でも重なって太平洋戦争は敗戦に終わりました。
それは日本近代史の様々な面で生じた科学知識の消化不全の結果でした。
こうした積年の消化不全も聖句吟味活動は、いとも容易に打開してしまうのです。
また、不思議に見えますが、知識の根まで理解すると、もうそれは輸入知識でなく「自分の知識」になります。
するとそれは独自なアイデアを産み出し続けます。
これは真の知識習得をするための鍵でもあります。
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