Sightsong

自縄自縛日記

『Number』の野茂特集

2008-10-18 10:35:51 | スポーツ

『Number』(文藝春秋)が、「野茂英雄のすべて。」と題した特集を組んでいる。

「永久保存版」と大上段に構えているだけあって、これまでのタブー的な領域に踏み込んだ記事が多い。具体的には、大リーグ移籍時のバッシングと、その布石となった近鉄バファローズ鈴木監督との確執だ。

バッシングについては、その後手のひらを返したような反応を見せたメディアと野球界が、如何にネガティブ・キャンペーンを張ったかが手短に検証してある。その底には、多くの日本人が大事にしてきた日本野球が傷つけられることへの過剰な反応がありそうだ。

大リーグで活動することにより「日本野球の実力を白日のもとに晒してしまうことへの恐怖」は、幸福な形で解消されている。ただ、野茂をパイオニアとして日本野球と大リーグとの障壁が小さくなったいまでは、そのメンタリティは、WBCや五輪への過剰な反応にあらわれてきている。もちろんそれは、ナショナリズムとの危ういバランスのうえに成り立っているものの、決して悪いことではない。じつは私も一喜一憂している。

立花龍司コーチ、鈴木啓二元監督、野茂の前のエース・阿波野の野茂に対する印象が同じ特集内に掲載されるのは、「あれ」から長い時間が経ったことを示すものだろう。その意味で、「井戸の蛙」タブーを皆が正視できるようになったと言うこともできそうである。

しかし、さらに問題の根っこにある、日本のプロ球団が選手を縛り続け、人権を軽視していることについては、対談の発言という形でしか示されていない。ここが、「井戸の蛙」タブーの次のタブーなのだろうとおもえる。

ところで、野茂を実際に見たのは、川崎球場でのロッテオリオンズとの試合前に外野でストレッチをしている姿だけだ。もっと見ておけばよかったと後悔する。

●参考 野茂英雄の2冊の手記


ハノイの文廟と美術館

2008-10-18 01:43:52 | 東南アジア

ハノイで午前中だけ空いたので、外で朝食のフォーを食べ、「Van Mieu」まで歩いていった。『Lonely Planet』には、「Temple of Literature」(文廟)とある。孔子や儒学者たちを祀ったところだ。入場料は5千ドンだから、30円くらいである(桁が多くて混乱する)。

中国の建築様式とどのように異なるのかわからないが、指でつまみあげて皺になったような形の瓦や、屋根の龍の装飾がユニークだ。学者たちの名前が刻まれた板は、亀の上に乗っている。その亀が、四角い池の周りにたくさんある。

北京でも孔子を祀った「孔廟」を訪れたことがある。東京の湯島聖堂も孔子を祀っている。世界にこのような場所はどのくらいあるのだろう。


文廟の屋根 Leica M4、Summitar 50mmF2、TMAX400、イルフォードMG IV(サテン)、3号フィルタ


文廟の亀 Leica M4、Summitar 50mmF2、TMAX400、イルフォードMG IV(サテン)、3号フィルタ


糠雨の文廟 Leica M4、Summitar 50mmF2、TMAX400、イルフォードMG IV(サテン)、3号フィルタ


孔子 Leica M4、Summitar 50mmF2、TMAX400、イルフォードMG IV(サテン)、3号フィルタ

そのままホーチミン廟に向かったが、工事中とのことで入ることができなかった。引き返して、文廟の隣の美術館「Vietnam National Fine Arts Museum」に入った。2万ドン(120円)。

これが思いがけず立派な美術館である。展示は3階まであり、30部屋以上観ることができる。中世の木彫りや、伝統的なシルク画が面白い。油彩は、「銃後」的なものや、サイゴン解放など、戦争を題材にしたものが多くあった。

とりわけ目を引くのは、「lacquer etching」という手法で、光沢のある板(漆塗りなのか?)をびっちりと細かく掘り込んだ作品群である。作家は何人もいたが、それぞれ掘り方のセンスに個性が見られた。


Huynh Van Thuan『Harvest Time at Vinh Kim』 Leica M4、Summitar 50mmF2、TMAX400、イルフォードMG IV(サテン)、3号フィルタ


Huynh Van Thuan『Harvest Time at Vinh Kim』(部分) Leica M4、Summitar 50mmF2、TMAX400、イルフォードMG IV(サテン)、3号フィルタ