Sightsong

自縄自縛日記

ウィレム・ブロイカーとレオ・キュイパースとのデュオ『・・・スーパースターズ』

2009-11-01 23:23:34 | アヴァンギャルド・ジャズ

ウィレム・ブロイカーの活動は、奇怪で猥雑な(勿論、誉め言葉である)グループ「コレクティーフ」でのオーガナイザーとして専ら評価されている。サックスなどマルチ・インストルメンタリストとしての実力について、誰かちゃんと書いているのだろうか。もっとも、私もそもそもブロイカーの音楽をそんなに多く聴いているわけではない。

それでも、ギュンター・ハンペル『ミュージック・フロム・ヨーロッパ』(ESP、1966年)でのバスクラは魅力的であるし、コレクティーフのピアニストを務めたレオ・キュイパースとのデュオ作『・・・スーパースターズ』(FMP、1978年)も好きなLPだ(CDが出ているかどうか知らない)。タイトルからしてすっとぼけている。

ここで、ブロイカーは7種類の管楽器を吹く。ソプラノサックス、アルトサックス、テナーサックス、Bフラット・クラリネット、Eフラット・クラリネット、バスクラリネット、リコーダー。最後のリコーダーは電子機器ではなく縦笛のリコーダーである。このソロがなかなか傑作で、音をよれよれさせながら終えたところで大きな拍手が起きている。また、あからさまな剽窃が頻発し、ベートーヴェンの「第九」さえ登場する。B面最初の曲「THERE'S NO BUSINESS AND SO ON」は、ミュージカル「THERE'S NO BUSINESS LIKE SHOW BUSINESS」(ショウほど素敵な商売はない)のパクリであり、ブロイカーとキュイパースが声を揃えてハモったかと思えばすぐに自分の楽器に戻り、爆笑させられてしまう。この曲は、チャーリー・パーカー「ナウズ・ザ・タイム」で締めくくられる。最後の曲は「カーク」と題され、なんとブロイカーがローランド・カークばりに同時に2本のサックスを吹いてみせる。

ふざけたものを軽いものとしか捉えられない、シリアスな演奏こそが王道だと思っているようなジャズ・ファンは多いだろうから(勿論、批判である)、これも傑作として扱われる機会は少ないかもしれない。しかし、これだけの楽器を余裕しゃくしゃくで吹きこなすブロイカーは凄いと思うのだ。5年ほど前に、コレクティーフをライヴで観たときは、構成とそれに反するアナーキズムとの共存、ブロイカーのソロの疾走に、この爺は凄いなと印象付けられたのだった。

もっとも、ブロイカーならではのサックスの音色はと言われると、よくわからない。


ライヴのときに変なポストカードを貰った