東京フィルメックスで、マレーシア映画『セルアウト!』(ヨ・ジュンハン、2008年)を観る。上映前に、監督がステージ挨拶をした。曰く、従来のマレーシア映画とは異なるが、マレーシアを反映したものである。
テレビも家電も何もかも、「FONY」というグループ会社が牛耳っている。そのお偉方はどうかしているほど頑固で嫌な奴ら。テレビレポーターは、若い女性にその座を奪われる危機感で、次々に過激な番組に足を踏み入れていく。そして、人の死に際をレポートする『最後の瞬間』という番組で大当たりするものの、次に良いタイミングで死ぬ人を探し出し続けるという悪夢に苛まれる。
かたや、10種類の大豆製品を作ることができる製品を開発している技術者は、お偉方に、「保障期間を過ぎた途端に壊れる装置を組み込め」と命令され、人格分裂の挙句、理想主義者と現実主義者のふたりに分身してしまう。
歯止めのない悪夢的なイメージが面白いものの、ツボが違うのか、笑うというより痙攣しながら呆然と観た。マレーシアのことは何一つ知らないので判断できないが、何がマレーシア的なのだろう。企業の寡占か、マスメディアの支配か、製品に対する責任の無さか。実際に、『最後の瞬間』では、技術者の男ふたりのうち、どちらを死刑にすべきか、と全国の視聴者に問いかける。携帯電話での投票の結果、自己破壊装置が付いた製品など作れないと苦しむ「理想主義者」が死刑となってしまうのだ。