『世界』2010年2月号(岩波書店)は、「普天間移設問題の真実」特集を組んでいる。
まず印象的なのは、移設先の見直しを検討しているだけで、米国の機嫌を損ねてしまう、日米同盟にヒビが入ると 多くのメディア(沖縄の2紙や『東京新聞』などごく一部を除く)が喧しいことに関して、何人もの論客が熾烈な批判をしていることだ。もっとも、その批判は当然すぎるくらい当然なのであって、米国の恫喝外交をそのまま流すばかりか、なぜか身体を反転し、米国のスポークスマンになったかのような新聞やテレビの姿には眼を覆いたくなる。
寺島実郎は、「日本の軍事同盟を変更のできない与件として固定化し、それに変更を加える議論に極端な拒否反応を示す人たちの知的怠惰」と表現している。
西谷修(琉球大学)は、「まるで日本のメディアはアメリカ・タカ派の代弁者か、その幇間のようである」と皮肉って、「政府や官僚が(それに染まってメディアも)「自発的隷従」を決め込んで、米国の一部の顔色をうかがって「日米同盟」維持に汲々としたり、あるいは「米国の意向」なるものを盾に自分たちの都合でしかないものを国民に押し付ける、といったやり方」だと断罪している。
外岡秀俊(朝日新聞)は、浅い報道に対し、「今ここに至って袋小路に入ったのではなく、この13年間の迷走の積み重ねが現在につながっている、という認識」に立つべきだとしている。
皆イラついているのだ。旧政権与党の懲りない面々が、辺野古にすべきだなどと嘯いたところで、どの口でそれを言う、と批判するメディアは極めて少ない。
私たちに刷り込まれた固定観念、
①米国は日米軍事同盟のために最善の策として辺野古移設を主張している、
②米国の軍事戦略上、沖縄という地政学的な要所に基地を置かなければならない、
についても、実に疑わしいものだ、とする主張は議論の中心に置く必要がある。
伊波洋一・宜野湾市長が、沖縄の米軍海兵隊はみなグアムに移転する計画なのだと調べ上げている(普天間が辺野古に移るという図式はそこにはない)。既に昨年から大きな議論になっているにも関わらず(>> 参照『「癒しの島」から「冷やしの島」へ』)、すぐに忘れ去ったようなフリがなされる。旧政権与党が(ひょっとしたら今の政権の一部も)、米軍に居続けてほしいがために神話をつくりあげたのだということを、いかに常識化していくか。
●『世界』における沖縄
○『沖縄戦と「集団自決」』(2007年臨時増刊)
○「誰が教科書記述を修正させたか」(2007/11)
○『「沖縄戦」とは何だったのか-「集団自決」問題を中心に』(2007/7)