『けーし風』第65号(2009.12、新沖縄フォーラム刊行会議)の特集は「新政権下で<抵抗>を考える」と題されている。
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ここに収められた原稿が書かれてから現在までの間に、名護市長選で辺野古基地反対を掲げる稲嶺市長が誕生し、かたや、腹立たしいことに、高江住民の「通行妨害」に関して防衛省が本訴訟を行った。新政権だから必ずしも方針転換ということにはならない。
これまでの負の遺産に抗して日米軍事同盟の軌道修正を行うこと(ましてや根本的に見直すこと)自体が難事業であることは明らかなのであって、突然短期間で解決することを至上命題であるかのように前提視し、政権のブレのみを採りあげて云々することはあまりにも浅薄である。安次富浩「なぜ急ぐ鳩山政権?」では、まず危険な普天間を撤去し、県外移設を「鈍行で協議」すればよいと主張している。また、新崎盛暉「戦後の日米関係の本質と普天間問題」では、「鳩山ののらりくらりに、ある種の期待を持っている」と呟いている。この真っ当さにおいて、近視眼メディアとの落差は何ならむ。
「「最後は私が決める」と言いながら、決断を先延ばしにしているかに見える鳩山に対して、早期に決着しなければ、日米同盟が危うくなる、と批判する声が、マスメディアに溢れている。だが、実はわたしは、鳩山ののらりくらりに、ある種の期待を持っているのだ。彼は、集中砲火を浴びながらも、自らの理念を手放すまいとしているのではないかと。戦後の日米関係はあまりにも対米従属的だとの認識をもち、もう少し対等性を回復して、東アジア諸国とのバランスもとろうとしているのではないかと。」
最近の『世界』(岩波書店)と同様、我部政明「普天間基地に対するアメリカ政府の動きをどう見るか」においては、沖縄に戦略上海兵隊が必要なのだとする大前提に疑義を示している。このあたりは、他の指摘も含め、その<大前提>の矛盾を整理したいところだ。
メディアでは、沖縄での<基地経済への依存>を示すようなコメントのみを切り出しているが、これはグアムにおいて<基地拡大による経済効果>を期待するコメントばかり見られることと共通している。これに対し、上原こずえ「軍事化の進むグアムを旅して」によれば、まったくそれは実態と乖離していることがわかる。ここで感じられるのは米国内での南北問題であって、マージナルな地に汚れを塗りたくる点はきっと沖縄と共通している。
「島では現在、開発業者による大規模な不動産関連の会議が活発に開催されている。植民地化・軍事化の歴史が繰り返されてきたグアムでは、基地の拡大イコール「経済開発」というイデオロギーを軍隊が喧伝してきた。しかし、基地はグアムの自立を支えてはいない。むしろ、米軍基地が島の土地や水などの自然環境を支配し、自立の可能性も奪ってきたのだ。」
山口県岩国市の井原・元市長のインタビューは興味深い。特に選挙において如何なる不正が行われているか。事前投票で集票田の企業がバスで投票に行き、他の候補には入れにくくするという方法については聞いたことがあったものの、さらに「会社に言われて相手方に投票し、投票所前で写真をとってお金をもらう」方法があったことが暴露されている。
今回の「読者の集い」は6人参加。終わった後に神保町の「さぼうる」でさらに話していたところ、もっと驚く方法を教えてもらう。何と、「2人1組で投票し、投函する前にお互いに見せ合う」のだそうだ。当然監視員は見ないフリ。日本中どこでも田舎は相互監視社会であるから(本当)、これは決定的である。
他に話題となったことは、次号『けーし風』を読んでいただくとして、例えば次のようなこと。
○ジョゼフ・ナイの論文において、沖縄の軍事問題は日米関係のひとつに過ぎないと書かれていること。
○アライアンスは曖昧な<同盟>ではなく<軍事同盟>と訳すべきではないかということ。当然のように<同盟>と使われ始めたのは小泉政権以降ではないかということ。
○基地跡地の利用に関連して、沖縄の付加価値を経済収入に結び付けられる方法があるのではないかということ。
○ツイッターはネット世論の形成に力を持つはずだということ。
●参照
○『けーし風』読者の集い(8) 辺野古・環境アセスはいま
○『けーし風』2009.3 オバマ政権と沖縄
○『けーし風』読者の集い(7) 戦争と軍隊を問う/環境破壊とたたかう人びと、読者の集い
○『けーし風』2008.9 歴史を語る磁場
○『けーし風』読者の集い(6) 沖縄の18歳、<当事者>のまなざし、依存型経済
○『けーし風』2008.6 沖縄の18歳に伝えたいオキナワ
○『けーし風』読者の集い(5) 米兵の存在、環境破壊
○『けーし風』2008.3 米兵の存在、環境破壊
○『けーし風』読者の集い(4) ここからすすめる民主主義
○『けーし風』2007.12 ここからすすめる民主主義、佐喜真美術館
○『けーし風』読者の集い(3) 沖縄戦特集
○『けーし風』2007.9 沖縄戦教育特集
○『けーし風』読者の集い(2) 沖縄がつながる
○『けーし風』2007.6 特集・沖縄がつながる
○『けーし風』読者の集い(1) 検証・SACO 10年の沖縄
○『けーし風』2007.3 特集・検証・SACO 10年の沖縄