Sightsong

自縄自縛日記

浦安市郷土博物館『海苔へのおもい』

2010-01-10 23:34:03 | 関東


おかきの天日干し


獅子舞もやっていた

鏡開きがあって汁粉が振舞われるというので、家族で浦安市郷土博物館へ足を運んだ。

自宅からは歩いて30分以上かかるが、旧江戸川から曲って境川沿いを歩くのは気持ちが良い。息子と、あの煎餅屋の隣の公園でおかきを干していたよねなどと話しながら煎餅屋の前に行くと、やっぱり天日干しにしていた。

郷土博物館では、『海苔へのおもい』と題した展示を行っていた。海苔には少なからず興味を持っているので、じっくりと観た。かつての海苔養殖の器具が興味深く、沖縄のもずく用の網との比較まで行っていた。そして初めて知ったことだが、1958年の本州製紙(当時)からの黒い水事件が沈静化し、工場も水処理設備を導入したあとも、実はなお汚水が流されていたのだという。事件後に制定された水質二法(現在の水濁法)の縛りが甘すぎたということに他ならないが、それが表面化しないほど漁業への意欲が衰えていたという評価もできるようだ。

もっと知りたくなって、博物館の報告書『のり―東京湾のノリ―』(2002年)、『のり2 ちば海苔いまむかし』(2006年)の2冊と、過去の企画展のパンフレット『おらんハマのゆくえ』(2008年)を入手し、帰宅してざっと読んだ。

現在の東京湾での海苔養殖は、主に富津以南、それに木更津、わずかながら三番瀬でなされている。君津あたりで江戸末期にはじまったのは、大森・品川での海苔養殖を倣ってのことらしい(確か大森に海苔の博物館があり、いつか行ってみたいと思っている)。しかしそれも、日本発祥ではないという指摘がなされている。

海苔養殖は東京湾で発祥したといわれるが、文献では韓国の方が先に行っていたようだ。15世紀には、そのことを示唆する文献がある。仮説が含まれるが、韓国で海苔養殖が行われていて、その方法が秀吉の朝鮮出兵が終わって撤退するときに、広島あたりを支配していた毛利の本隊が技術者を連れて帰り、広島湾で養殖をはじめた可能性がある(16世紀後半頃)。竹1本でヒビを作るなど、いくつかの点で韓国と共通しており、可能性を示唆している。海苔養殖発祥の地が品川沖で、すべて日本のオリジナリティーがあるといういい方は難しいかもしれない。
(千葉県立中央博物館・宮田昌彦、『のり―東京湾のノリ―』所収、2002年)

●海苔
三番瀬の海苔
豊かな東京湾
東京湾は人間が関与した豊かな世界
『境川の人々』


北井一夫『Walking with Leica 2』

2010-01-10 11:08:24 | 写真

北井一夫の写真展『Walking with Leica 2』(ギャラリー冬青)に足を運んだ。

今回展示されている作品は、「引きこもり」ものが多い。柚子、剥いた林檎と剥かない林檎、ハンガー、丸めた紙屑。それらを自然光で、逆光で、おそらくは旧ライカレンズの最短撮影距離1メートルくらいから撮影している。そのような撮影条件であるから、オールドレンズ(最近はエルマー50mmF3.5が多いとか)では甘く、背後のボケは汚い。

しかしこれが良いのだ。枯淡でもないし、アナクロニズムでもない。北井写真の魅力を人に伝えるのは難しい。敢えて反骨と言ったところで、あのソフトな人柄に触れると肩透かしをくらってしまう。

ギャラリーのテーブル上に、2つの箱に沢山のオリジナルプリントが収められ、自由に観ることができる。今回の写真集『Waliking with Leica 2』(冬青社、2009年)とじろじろと比較しながら観るという贅沢な行為をしていると、印刷媒体とオリジナルプリントとの違いがまざまざとわかる。バライタの印画紙に焼き付けられたそれは、生々しく、濡れている。もちろん、生きることは濡れることだ、という意味で濡れている。一方の印刷も、冬青社の最近使っている矢沢印刷のクオリティが素晴らしい。

そうしているうちに、北井さんと冬青社の高橋社長が戻ってきた。署名していただき、中国の写真家の話、海外の印刷会社の特性の話などを伺う。前から話のあった、米国での写真集出版は進んでいるようだ。これは楽しみである。

『抵抗』『バリケード』 米国の出版社から2010年10月発売予定
『三里塚』 英国の出版社から2010年10月発売予定
 ※ワイズ出版のものとは異なり、オリジナルの復刻
東京都写真美術館での個展 2013年

中野駅への帰路、渋い中古カメラ店「光映社」に寄ろうと思ったら再開発のようで見当たらない。ああ、もう銀塩カメラじゃなあ、と思っていたら、駅前に小奇麗になって店を構えていた。会員制だということで、おそらくもう暖簾をくぐることはないだろう。 

●北井一夫
『Walking with Leica』、『英雄伝説アントニオ猪木』
『境川の人々』
『ドイツ表現派1920年代の旅』
『フナバシストーリー』