早稲田松竹で、陳凱歌(チェン・カイコー)の『花の生涯 梅蘭芳』(2008年)を観る。心待ちにしていたのに去年見逃していた作品なのだ。
京劇の天才女形、梅蘭芳(メイ・ランファン)は、改革を欲し、邪気のなさゆえ師と対決する。3日間の興行の結果、師は敗れ、そのまま死を迎える。梅には、その演技に魅せられた男が常に義兄弟として寄り添い、多くの犠牲を払ってまでも芸術性を高めることだけを追い続けた。日本の中国侵略。日本軍のプロパガンダに利用されそうになった梅は、演技をやめてしまう。そして終戦。
陳凱歌の演出はダイナミックかつ繊細(ステレオタイプな言い方だが、本当にそうなのだから仕方がない)。特に、梅のリスキーな米国公演がはじまるなか、裏切り者として罵倒された義兄弟が、雪の降る劇場の外で死と生の間、そして過去との間を行き来し、スタンディングオベーションの中へ入っていく場面などは、あまりの素晴らしさに身動きできなくなってしまった。
チャン・ツィイーの大根ぶりは愛嬌として、レオン・ライの眼の周りに漂う雰囲気は悪くない。義兄弟を演じたスン・ホンレイ、梅の師を演じたワン・シュエチーが素晴らしく芸達者だ。
陳凱歌には、やっぱりワイヤーアクションよりもこのような映画を撮ってほしい。
中国の映画館にあった『梅蘭芳』の看板(2009年1月)