沖縄でヤギ料理が根付いていることは知ってはいるものの、那覇で1回と東京で1回、刺身を食べたことがあるだけだ。それはあっさりしたもので、よく聞かされる独特のニオイがどんなものか未だに知らない。スペインでヤギ乳のチーズを買ってきたが、それもまた別物。自分は食べ物に関しては保守的なのだ。
平川宗隆『沖縄でなぜヤギが愛されるのか』(ボーダー新書、2009年)を読んでわかるのは、東アジアから東南アジア、南アジアにかけて<ヤギ食い>がむしろ一般的な食文化であり、海を介したつながりが強い沖縄が<ヤギ食い>文化圏に入っていることは自然であることだ。
その沖縄のヤギにしても、白いヤギは新しい種類だという。在来種は黒や茶色の種であり、中東から中国、または東南アジアを経て伝来していた。そして昭和になるかならないかの頃、長野県から「日本ザーネン種」を導入した結果、主流が白になっている。家畜として身体の大きな種が好まれた結果であった。それでも、人口や観光客が多い本島では白の割合が高く、離島ではまだ在来種が比較的残っているらしい。
本書で紹介されている各国のヤギ料理は面白い。ベトナムの料理には、ヤギの動脈血に塩を入れて固め、その中に生肉を入れた強烈な<ニンビン>がある。血を使うのは珍しくないようで、沖縄にも固めた血を炒めた<チーイリチャー>があるというし、波照間島の(昔のやんばるでも)ヤギ汁は味噌と血を混ぜ合わせて味付けをしているという。
次に沖縄を訪れる際には、ぜひヤギを食わなければなるまい。
●参照
○岡本太郎・東松照明 まなざしの向こう側(石垣島で生きた山羊を焼く)
○平敷兼七『山羊の肺』
○G.I.グルジェフ『注目すべき人々との出会い』(砂漠で山羊に砂を食べさせ、その山羊を食べ・・・)
○アーヴィング・ペン『ダオメ』(レグバ神に生贄の山羊の血を塗る)
○ロシア・ジャズ再考―セルゲイ・クリョーヒン特集(ステージで山羊の毛を刈る)