ダニエル・ヤーギン『探求』(日本経済新聞出版社、原著2011年)。ゆっくりと読み進めていたが、ハノイでようやく読了した。
言ってみれば、化石燃料、再生可能エネルギー、電気、CO2などについての開発と変転の歴史書である。これが滅法面白く、とても読み飛ばすわけにはいかない。 新しい本だけあって、例えば東日本大震災と原発事故、中国の省エネ規制、シェールガスの勃興、再生可能エネルギーの技術・市場変動など、最近の動向まで追ったものとなっている。邦訳は上下巻で千ページにもなる大部の書だが、じっくりと読む価値は大きい。
CO2に関しては、第4部に記述されている。確かに、19世紀からの長い研究の積み重ねがあることがよくわかる。贔屓の引き倒しではない。IPCCの提示したものが確固たる結論ではないことも、クライメートゲート事件についても、しっかりと踏まえてのことだ。確かに、最近の日本においては、温暖化対策が原子力推進策とセットになって進められてきた。しかし、この構造を疑うあまりに陰謀論に走るのは、あまりにも浅はかだと言わざるを得ないだろう。
それにしても、政治と科学とビジネスとをうまく織り交ぜた語り口は見事である。読みながら、自分もこんなものを書かなければいけなかったのだなと反省してしまった(>> こんな本とか、こんな本とか)。もっとも、相手はピューリッツァー賞を受賞した専門家であるが・・・。
エネルギー問題についても、開発史、技術、将来予測、市場、エネルギーセキュリティなど、まったく一筋縄ではいかない。つい最近の常識さえもリアルタイムでどんどん変貌していく。
つまり、原子力を考える上でも、再生可能エネルギーの可能性を見る上でも、それから国家間の関係や貿易を広く考える上でも、エネルギー問題のさまざまな要素をじっくり見極めなければ話にならないということだ。「巨悪」の存在を前提としたり、知識なく陰謀論に加担することは、誰のためにもならない。
大推薦。