Sightsong

自縄自縛日記

チェルシーのギャラリー村

2014-07-02 23:27:50 | 北米

マンハッタンのチェルシーには多くのギャラリーが集中していて、確かに歩くと楽しい。もっとも、最近では地価の高騰もあって、ブルックリンなどに拠点がシフトしつつあるという話も読んだ。

廃された鉄道の高架を再利用した歩道、兼、公園である「ハイ・ライン」を歩いて、たどり着いた。

◆ Anna Zorina Gallery

バーナード・パーリンという20世紀前半のアメリカの画家の作品を展示。第二次世界大戦の負傷兵を描いている。

◆ J. Cacciola Gallery

チャイナ・マークスによる、布とシルクスクリーンによるコミカルな作品群。「フルーツサラダは食べたくない!うんざりだ!チーズバーガーが食べたい!」「ファーストフード食べてたら死ぬよ!フルーツは身体にいいんだよ!食べられてラッキーだと思わないと!」などといったセリフが笑える。

◆ Margaret Thatcher Projects

Venske & Spanleの石による彫刻を展示。ほとんど『家畜人ヤプー』である。

◆ Gagosian Gallery

有名アーティストの作品を揃えた名門のようで、アンゼルム・キーファー、ロバート・ラウシェンバーグ、ジュリアン・シュナーベル、ゲオルグ・バゼリッツらの作品が展示されていた。なかでもキーファーのミクスドメディアによる暗鬱な作品、デュシャンにインスパイアされたかもしれないラウシェンバーグの車輪の作品に目を奪われた。

◆ Mary Boone Gallery

エド・パスケによるキッチュな作品。オバマやビン・ラディンらをモチーフにしている。

◆ Luhring Augustine

あのラリー・クラークの写真。またしても男の○○○ばかり。もういいです。

◆ Andrea Rosen Gallery

マーティン・ドゲヴァルによる写真は、白壁のマチエールと影を捉えており、面白かった。アルフレッド・スティーグリッツの作品もあった。

◆ Metro Pictures

ルイーズ・ローラーによる、「なぞり」作品。既存の芸術作品が線描でパクられている。村上隆まである。なんだこれは。 

◆ Marianne Boesky Gallery, Marlborough Chelsea

2か所のギャラリーそれぞれで、デトロイトをテーマにした新旧の作品。スピーカーからは自動車工場の音。

Metroplex Recordsというレーベルのレコードが並べてあるが、これはデトロイトのレーベルか、あるいはヴァーチャルなものか。その上に20世紀初頭の絵が架けてあって愉快。また、クルマに淫するようなリズ・コーエンの写真と変態動画。

◆ Yossi Milo Gallery

セ・ツン・レオン(Sze Tsung Leong)による「Horizon」と題された写真。世界の異なる場所におけるフラットな光景を並べて、その類似性を気づかせるような構成になっている。ギャラリーの係員は、meditationalでeducationalだ、ウユニ塩湖なんて初めて知った、と話していた。

わたしもかなり気に入ったので、カタログを入手。

◆ Driscoll

ジェニファー・パッカーの油彩のマチエールが、和紙のようでなかなか魅力的。

◆ BDG

ピーター・マーテンセンによる一連の奇妙な作品。白シャツのオヤジたちが、いちいち水につかっているものばかり。

◆ Praxis

Lautaroの熱帯的な作品。

◆ Jim Kemner Fine Art

あっ、ゲルハルト・リヒターが道に向けて飾ってあると吃驚して入ったところ、スタンリー・カッセルマンという別の画家による作品だった。だって間違えるでしょう。

◆ Nancy Margolis Gallery

花をモチーフにしたグループ展。印象稀薄。

◆ 303 Gallery

印象稀薄。

◆ Cheim & Read

ジョン・ミッチェルによる木をテーマとした作品群。印象稀薄。

◆ Debuck

ジョン・クレメントによる「大きな輪っか」。どこか道端にでもパブリック・アートとして置けば。

◆ Bruce Silverstein

ブレア・ソウダース。印象稀薄。

◆ Asya Geisberg Gallery

まるでラッセンが描いたような宇宙船の絵とか。印象稀薄。

◆ 新ホイットニー美術館

 2015年オープンだそうで、ハイ・ラインの南端に建築中だった。設計はレンゾ・ピアノ。 


フランク・レイシー@Smalls

2014-07-02 21:45:08 | アヴァンギャルド・ジャズ

The Stoneから40分くらい歩いて、Smallsへと移動。(地下鉄の便がよくない場所だし、タクシーは高くて面倒だから乗りたくないのだ。)

フランク・レイシー率いる「Smalls Legacy Band」を観ることが目的だが、まだ前のグループが演奏中で、ピーター・バーンスタインもそのなかにいた。

Frank Lacy (tb)
Stacy Dillard (ts)
Lummie Spann (as)
Josh Evans (tp)
Theo Hill (p)
Ameen Saleem (b)
Kush Abadey (ds) 

Smallsは地下にあり、ガヤガヤしている。演奏中もお喋りをしていたり、酔っぱらってミュージシャンに色目を使う女性がいたり、ずっとベタベタしているカップルがいたり。それでも熱心にひとりで聴きにきたとおぼしき人も多く、雰囲気は悪くない。

フランク・レイシーは目ヂカラでグループを統率しているとしか思えないのだが、トロンボーンのソロも大迫力。サイドメンもやたら巧い。これで、オーソドックスなアプローチのジャズを全面的に押し出してくるのだから、本当に気持ちが良い。

●参照
フランク・レイシー『Live at Smalls』http://blog.goo.ne.jp/sightsong/e/c27876acc5e4023c58100dede471b8e5


ジェリ・アレン、テリ・リン・キャリントン、イングリッド・ジェンセン、カーメン・ランディ@The Stone

2014-07-02 14:57:42 | アヴァンギャルド・ジャズ

またしても、イーストヴィレッジのThe Stone

ジェリ・アレンテリ・リン・キャリントンとのデュオだと思い込んでいたら、トランペットのイングリッド・ジェンセン、ベース(知らなかったがLinda Ohという中国系マレーシア人のベーシスト)が加わっていた。さらに、途中からはヴォーカルのカーメン・ランディまで。これで15ドルはお得、というか、狭いハコで吃驚するほど豪華な面々。

Geri Allen (p)
Terri Lynn Carington (ds)
Ingrid Jensen (tp)
Linda Oh (b)
Carmen Lundy (vo)

メンバーは全員女性。それに加え、ジェリが昼間に女性向けの「Jazz Camp」を開いていたそうで、その生徒たちが20人くらい詰めかけた(ピアノの向こう側にみんな座ったので、演奏者の背後に若い女性たちの顔が見える)。The Stoneの狭い入口を、ウラワカキ女性たちがアデヤカに笑いながら入っていくところを見ると、何が起きたのかと仰天したぞ。おそらく会場の9割は女性だったのではなかろうか。

曲は、「All of You」といったスタンダードの他はジェリのオリジナルなど。トニー・ウィリアムスにささげた曲(?)も演奏した(『21』に収録されていたが何だったか)。ジェリのピアノは悪くないのだが、もうかつてのような突破力を持ち合わせていないのだろうかという印象を持った。

イングリッド・ジェンセンのトランペットの音色は、綺麗に分割されていて鮮やか。だが、厚みや重みといった要素が感じられない。テリ・リンのドラムス同様、軽くて爽快に飛ばすところに、魅力を見出すべきか。

以前にテリ・リンのプレイを観たのは随分前、2002年の「東京JAZZ」において、ハービー・ハンコックのグループで大きくフィーチャーされていたときだったが、ジャズフェスではプレイの細かなところはわからない。カーメン・ランディに、「テリ・リンはグラミー賞だからねえ」と紹介されて嫌そうな顔をしており何のことか解らなかったが、戻って調べてみると、デューク・エリントンの『Money Jungle』に捧げたアルバムによって受賞していた。