ビリー・バングがサン・ラをフィーチャーした作品『A Tribute to Stuff Smith』(Soul Note、1992年)をときどき聴いている。
Billy Bang (vn)
Sun Ra (p, syn)
John Ore (b)
Andrew Cyrille (ds)
題名の通り、バングが偉大なヴァイオリン奏者のスタッフ・スミスに捧げたアルバムであり、曲も、スミスのオリジナルの他に、「Satin Doll」、「April in Paris」、「Lover Man」、「yesterdays」といったスタンダード。なぜサン・ラなのかといえば、かれがスミスと共演したことがあるからだという。バングも、一時期、サン・ラ・アーケストラに加入したことがあったらしい。
もちろん、サン・ラという名前がサイドマンとして書かれていることに驚き、また期待もするわけだが、それはすれ違いという結果に終わる。サン・ラ(英語ではRaと書かれているが、日本語で「ラーは」と書くのは妙だ)は、確かに斜め上の装飾音をやたらと入れたりして面白くはあるものの、総じて、普通のブルース・ピアニストであるように聞こえる。もっとも、奇抜なことをやってほしいという期待がこちらに勝手にあるわけだ。
スマートで切れ味が異常に鋭い武術の達人を想像しながら、アンドリュー・シリルのドラミングを聴くのは、また違う愉しみ。
●参照
サン・ラの映像『Sun Ra: A Joyful Noise』
エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(バング出演)
ビル・マッケンリー+アンドリュー・シリル@Village Vanguard
アンドリュー・シリル『Duology』