NHK「こころの時代」枠で放送された『海鳴りの果てに~言葉・祈り・死者たち~』を観る(2014/7/6放送)。
詩人の金時鐘さんは、済州島で皇国少年として育ち、17歳のときに終戦を迎えた。やがて、四・三事件(1948年)に関与した咎で追われ、日本に密航する。辿りついた大阪・猪飼野(現・生野区)では、朝鮮に近い日本語が使われていたという。
流麗な日本語を使っていた金時鐘さんは、ことばの限界を知り、ことばへの復讐をはじめる。かれが幼少時より親しんでいた唱歌は、いまも心に響く。それだからこその限界と復讐である。批評を持たない日本語、情感だけの日本語ではない日本語によって、かれは詩を書き連ねた。ことばに挑み、殺すことなくしての、ことばの再生はない、ということか。
●参照
『海鳴りのなかを~詩人・金時鐘の60年』
金時鐘『境界の詩 猪飼野詩集/光州詩片』
細見和之『ディアスポラを生きる詩人 金時鐘』
尹東柱『空と風と星と詩』
文京洙『済州島四・三事件』
『済州島四・三事件 記憶と真実』、『悲劇の島チェジュ』
オ・ミヨル『チスル』、済州島四・三事件、金石範
済州島四・三事件と江汀海軍基地問題 入門編
金石範講演会「文学の闘争/闘争の文学」
仲里効『悲しき亜言語帯』
梁石日『魂の流れゆく果て』
藤田綾子『大阪「鶴橋」物語』
金賛汀『異邦人は君ヶ代丸に乗って』
鶴橋でホルモン(与太話)
林海象『大阪ラブ&ソウル』