Sightsong

自縄自縛日記

フレディ・ハバード『Without a Song: Live in Europe 1969』

2014-08-17 22:50:45 | アヴァンギャルド・ジャズ

フレディ・ハバード『Without a Song: Live in Europe 1969』(Blue Note、1969年)

Freddie Hubbard (tp)
Roland Hanna (p)
Ron Carter (b)
Louis Hayes (ds) 

たまにハバードのラッパを聴くのはいいものだ。やっぱり、偉大な個性だったのだなということが明らかにわかる。

「溌剌」という言葉を調べると、「魚が跳びはねるさま」という意味もある。まさに旬のハバードが、休む間もなく水上で跳びはねている。これならば、「キレがある」という常套句を使っても文句は出ないだろう。

もっとも、わたしの目当てはドラムスのルイ・ヘイズ。この人は風神なのである。風とアラシを巻き起こしているからといって、ジャズ界のトマソン=人間扇風機ことラルフ・ピーターソンとはわけがちがう。ヘイズがリーダーとなって、ハバードやジョー・ヘンダーソンらをメンバーにした「Jazz Communicators」が活動したのは、60年代後半だという。記録が残されていないことが残念。

●参照
ルイ・ヘイズ『Return of the Jazz Communicators』
マルグリュー・ミラー逝去、チャーネット・モフェット『Acoustic Trio』を聴く
スピーカーのケーブルを新調した(ルイ・ヘイズ『The Real Thing』)  


鎌田遵『ネイティブ・アメリカン』

2014-08-17 15:58:09 | 北米

鎌田遵『ネイティブ・アメリカン ― 先住民社会の現在』(岩波新書、2009年)を読む。

言うまでもないことだが、アメリカは白人による侵略によって拓かれた地である。「発見」以前から住んでいた先住民は一様ではなく、有名なチェロキー、ナバホ、ホピ、アパッチなど多くの部族がいた(いる)。先住民の部族数は500以上、先住民の血を引く人の数は412万人(2000年)とされるが、これは正確な数字ではない。申告や承認に基づくものであり、漏れも未承認もあるからだ。

アメリカ連邦政府は、19世紀後半から部族員の規定を活発化させ、その結果、先住民の土地や権利は著しく奪われる結果となった。現在では、内務省のインディアン局が先住民の担当部局であり、各部族の居住地(国内に約320)を認め、また、概ね民事の司法権は部族政府に帰属する。しかし、当然ながら、過去の不正により奪われたものは戻っていない。

どうしても、収奪政策と同化政策の様子を、琉球/沖縄など日本の先住民問題と関連づけながら読んでしまう。

●アパッチ族出身のジェロニモは、対白人抵抗闘争が制圧されたあと、最後の居場所を万国博覧会の展示会場に見つけ、自らを見世物とした(1898年、1901年)。この博覧会にはアイヌ民族も「招待」され、好奇の視線に晒された。
→ 大阪での「人類館事件」は1903年であり、ここでも、琉球人やアイヌ人が「展示」された。
●1920-30年代、先住民に対する同化政策が苛烈なものとなった。本名を捨てるよう命じられ、母語を話すと、口のなかに洗剤を入れられ、「悪魔の言語を吐く口」を洗われた。
→ 自発的な改名、方言札
●先住民居留地は貧困で雇用機会がなく、そのことが、米軍への入隊者の多さとなってあらわれた。その流れは、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争へと継承され、先住民の帰還兵数は17万人にも及んだ。また、18歳以上の先住民人口の22%もが帰還兵である(2006年)。
→ 貧困層の入隊
●アメリカのウラン鉱山の9割が先住民居留地やその周辺にある。核実験の場所も同様。
→ 辺境の再生産
●先住民でもないのに、あたかも先住民であるかのように振る舞う人=「ワナビー」が出現した。
→ 願望としての沖縄

もちろんすべてが写し絵になるわけではなく、単純な比較はできない。しかし、少なくとも、先住民を認め、国家のなかで共生していこうとする動きに関して、日本はあまりにも鈍感であり、遅れているということはできる。

●参照
国立アメリカ・インディアン博物館


ジェフ・パルマー『Island Universe』

2014-08-17 09:22:32 | アヴァンギャルド・ジャズ

オルガンのジェフ・パルマーには馴染みがないのだが、『Island Universe』(Soul Note、1994年)の顔触れにはなかなかインパクトがある。

Jeff Palmer (Hammond B3 Organ- Bass Pedals)
Arther Blythe (as)
John Abercrombie (g)
Rashied Ali (ds) 

蛇のようにからみつきながら展開するラシッド・アリのドラムスも、ペラペラに軽くブルージーなアーサー・ブライスのアルトも悪くない。ただ、この演奏のなかには重たい要素がないのだね。したがって、聴くと看板ほどのインパクトはない。

ブライスは、いま、パーキンソン病に苦しんでいると報じられている。

●参照
サム・リヴァースをしのんで ルーツ『Salute to the Saxophone』、『Porttait』 (ブライス)
アリス・コルトレーン『Universal Consciousness』、『Lord of Lords』(アリ)
アリス・コルトレーン『Huntington Ashram Monastery』、『World Galaxy』(アリ)
ロヴァ・サクソフォン・カルテットとジョン・コルトレーンの『Ascension』(アリ)
ラシッド・アリとテナーサックスとのデュオ