セシル・テイラー、ビル・ディクソン、トニー・オクスレーのトリオによるライヴ録音『Cecil Taylor / Bill Dixon / Tony Oxley』(Victo、2002年)。
Cecil Taylor (p)
Bill Dixon (tp)
Tony Oxley (ds)
これはまあ、大した組み合わせである。期待して再生するのだが、どれだけ大音量にしても、こちらが勝手に期待するようなカタルシスは欠片も得られない。ここから、今井俊満や白髪一雄の絵のような怒涛のエネルギーを感じ取ることは難しい。
ディクソンのトランペットは空間をふわふわと浮遊するようであり、音響君と化しているのみ。テイラーのピアノも、まったく懐にもぐりこんでくることはなく、当然、ボディ・ブローは打ち込まれない。相棒オクスレーも、ひとりだけが突出するわけはない。
もはやこの時点で、テイラーはテイラーのエッセンスだけを取り出して、卵の殻の上で演舞をみせるだけになっていたのだろうか?昨年(2013年)に来日したテイラーを観た多くの者が、これをさらに押し進めたような「空中に浮かぶエッセンス」に、多かれ少なかれ、ショックを受けたはずだ。わたしはこの演奏(2002年)よりあとの2004年、アントワープで、テイラーとオクスレーとのデュオを観ているが、ひょっとしたら、そのときも、テイラーはテイラー旨味調味料と化していたのだろうか?
●参照
セシル・テイラー+田中泯@草月ホール(2013年)
ドミニク・デュヴァル セシル・テイラーとの『The Last Dance』(2003年)
セシル・テイラーの映像『Burning Poles』(1991年)
セシル・テイラー『The Tree of Life』(1991年)
セシル・テイラー『In Florescence』(1989年)
1988年、ベルリンのセシル・テイラー
イマジン・ザ・サウンド(1981年)
セシル・テイラーのブラックセイントとソウルノートの5枚組ボックスセット(1979~1986年)
セシル・テイラー『Dark to Themselves』(1976年)、『Aの第2幕』(1969年)
ザ・ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ(1968年)
セシル・テイラー初期作品群(1950年代後半~60年代初頭)