Sightsong

自縄自縛日記

キース・ジャレット『Standards Live』

2014-08-19 23:34:01 | アヴァンギャルド・ジャズ

キース・ジャレットの「スタンダーズ・トリオ」は、90年代半ばまでは熱心に聴いていたが、最近はさっぱりだ。初期の絢爛たる迫力が姿を変え、明らかにシンプルな演奏を指向するようになったからだ(『Bye Bye Blackbird』を聴いて、拍子抜けした人も多かったに違いない)。

もちろんシンプルなブルースに聞こえるものであっても、キースの旋律はトリッキーでさえあって、実はとんでもないことが起きているのかもしれない。それでも、最初期の『Standards, vol.1』における「All the Things You Are」の凄まじいイントロを聴いてしまうと、変貌したあとのキースはどうも受け容れられないのだった。こればかりは嗜好なので仕方がない。

絢爛系のスタンダーズの中では、『Standards Live』(ECM、1985年)が一番の愛聴盤である。ずっとLPを聴いていたのだが、最近、中古盤のCDを500円(!)で見つけて、その瞬間につかんでしまった。

Keith Jarrett (p)
Gary Peacock (b)
Jack Dejohnette (ds) 

ECM盤らしく(ライヴだが)、「Stella by Starlight」で静かにはじまり、「Falling in Love with Love」や「The Way You Look Tonight」で演奏がクライマックスに達する。これは何度聴いても信じがたいほど素晴らしい。

ゲイリー・ピーコックもジャック・デジョネットも跳びはねるようで良いのだが、アクロバチックでさえあるキースが凄過ぎて、2人が追随するように聞こえてしまう(ひいき目だろうね)。全方面から、コードに服従しない音を次々に繰り出してきて、リズムがまたビートという重力から自由であるようだ。

わたしがキースのライヴをはじめて観たのは1993年。できれば、その前に観たかった。言っても詮無いけど。

●参照
キース・ジャレットのインパルス盤
70年代のキース・ジャレットの映像
ピーター・ブルック『注目すべき人々との出会い』、クリストのドキュ、キース・ジャレットのグルジェフ集 


エラスムス『痴愚神礼賛』

2014-08-19 07:23:59 | ヨーロッパ

気が向いて、エラスムス『痴愚神礼賛』(中公文庫、原著1511年)を斜め読み。

オランダ生まれのデジデリウス・エラスムスはルネッサンス期の大知識人であり、それにも関わらず(それだからこそ)、このような奇書をものした。

最初から最後まで、痴愚女神が、権威主義的なカトリック界や賢人なる者を徹底的に莫迦にし、笑い飛ばす。なるほど、ここまで言われてはセンセーションにもなるわけだ。本書はひとり歩きして、マルティン・ルターの宗教改革にも貢献することとなった。

確かに、本書の現代日本版があらまほしきことなり。