「現代思想」誌(2014/7)が、「ロシア ー 帝政からソ連崩壊、そしてウクライナ危機の向こう側」と題した特集を組んでいる。この数日間ずっと読んでいて(ななめ読みではあるが)、成田から仁川に向かう飛行機のなかで読了した。
ロシア特集とは言っても、ウクライナ危機とクリミア併合という時期だけに、その問題に焦点を当てたものが多い。なかでも、以下のような点が留意すべきものとして挙げられていることがわかる。
○ロシアが先祖返りしたように力による支配を選んだとする見方は、あまりにも単純化しすぎている。
○旧ソ連国家における2000年代のカラー革命、EUの東方拡大は、ロシアにとっては脅威であった。それは、単なるヨーロッパ化という「文明の衝突」ではない。NATOの軍事的脅威である。
○ウクライナは、昔から国境を前提として支配されてきた地ではない。また、歴史的にも心情的にも一枚岩ではない。現在では、西側はヨーロッパ、東側はロシアへの精神的距離が近いと言われるが、それも単純な話ではない。ロシアからの視線、ヨーロッパからの視線はかなり異なりねじれている。
○場所によってはユダヤ人が多く、そのためにプーチンはユダヤ人対策に気を配ってきた。メディアも駆使した。
○また、キプチャク・ハン国時代からのタタール系も多かった(現在ではかなり減った)。
○沖縄における基地への抵抗は、ロシアでかなり知られている。このことを込みにした日本への視線については、ゴルバチョフの来沖により見えてきたものだった。(若林千代氏)
○もちろん、影響が大きい隣国はウクライナだけではない。イラン、そして中央アジアのスタン系諸国との歴史的な相互作用は、原子力開発や軍事協力を通じて複雑化している。(アレズ・ファクレジャハニ氏)
まずは、ロシアやウクライナやイランを巡る言説に対しては、眉唾でかからなければならないということだ。