館野正樹『日本の樹木』(ちくま新書、2014年)を読む。
ミニ樹木事典的なものかと思ったら、そうではなかった。それぞれの樹木は話のきっかけであり、なぜその樹木がそこにいるのかについての解釈やメカニズムが、ぎっしりと詰め込まれているのだ。針葉樹と広葉樹、常緑樹と落葉樹は、どのような得意分野を持っており、その結果、どう生き延びてきたのか。樹木と菌とはどのように共生しているのか。樹木の一生の長さはどのように決まってくるのか。・・・など、など。
たとえば、樹木の水分。極度に寒いときには、樹木は、細胞の中に糖などをため込み、さらに、細胞外で凍結した氷が細胞内の水を吸い出し、その結果どろどろになった水分はなかなか凍らない。逆に、そうでないときには、根の細胞が内部の管に糖などを放出し、それにより管内の浸透圧が高まり、土から水を吸い上げていく。つまり、樹木が自分の内部に糖などを放出しても、状況によって、水は出たり入ったりとまったく逆の動きをする。
ああ、なるほどねと思わされてしまう話ばかりである。これは面白い。まるで語りの芸。
●参照
園池公毅『光合成とはなにか』
荒俣宏・安井仁『木精狩り』
只木良也『新版・森と人間の文化史』
東京の樹木
そこにいるべき樹木
湯本貴和『熱帯雨林』
宮崎の照葉樹林
オオタニワタリ
科学映像館の熱帯林の映像
森林=炭素の蓄積、伐採=?