Sightsong

自縄自縛日記

坂手洋二『8分間』@座・高円寺

2014-11-23 21:05:12 | 関東

何かの飲み会で隣に居合わせたことがきっかけで、坂手洋二さんから新作『8分間』の招待状をいただき、座・高円寺で観劇してきた。

杉並区、おそらく井の頭線のプラットフォーム(隣の駅が見えるとか言っているし)。鈍行の間隔は8分間。登場するのは、女性が車輌との隙間に足を挟まれ困っている。助けようとする人たち、痴漢だいや冤罪だともめる男女、香港民主化の運動家を装う男女、他人が目に入らぬような雰囲気でやってくる若い男、すぐにツイッターにアップする女子高生、ファンタジー小説の作家など。

ひとしきり騒動が終わって次の電車が来ると、また同じ時間に戻っている。そしてまた次も、その次も。8分間で繰り広げられることは、それぞれ微妙に異なっている。

この悪夢のなかから見えてくるものは、「今、ここで」に他ならないのだった。面白かった。なお、音楽は太田恵資さん。

終わってから、同じ回に観た編集者のSさんと古本屋を巡り、沖縄料理の「抱瓶」で飲み食い。


「抱瓶」の揚げにんにく

●参照
坂手洋二『海の沸点/沖縄ミルクプラントの最后/ピカドン・キジムナー』


嘉手苅林次『My Sweet Home Koza』

2014-11-23 08:46:21 | 沖縄

嘉手苅林次『My Sweet Home Koza』(B/C Record、1997年)。ずっと愛聴していて、たまに聴くたびにおおっと思わせてくれる。

嘉手苅林次 (うた・三絃・ヴァイオリン)
宮城ちどり (ツラネ・はやし)
松田弘二 (ギター)
仲本興次 (ドラム・はやし)
関島岳郎 (チューバ・トランペット・他)
中尾勘二 (サックス・クラリネット・他)
鈴木常吉 (アコーディオン)
渋谷毅 (オルガン)

メンバー的には「沖縄・ミーツ・中央線」か。大島保克『今どぅ別り』と同じように、賑々しく、ときにひなびた楽団ぶりが、沖縄民謡にマッチする。絶え間なく「くすぐられる」のである。

嘉手苅林次は偉大なる嘉手苅林昌を父に持つ唄者。高嶺剛『嘉手苅林昌 歌と語り』や中江裕司『ナビィの恋』など、林昌の歌う映像でも、林昌の横で妙にノホホンと三線を弾き歌っているという印象だが、主役になると、その個性が全面的に爆発してすさまじく愉快である。声はスモーキーで、奇妙に上ずっていて、余裕綽々。「富原ナークニー~ハンタ原」における超はや弾きにもニヤリとしてしまう。

いやあ、林次さんのパフォーマンスを観たいなあ。もう何年も前に東京公演があったのだが、ちょうど激務の最中で涙を呑んで断念した。沖縄に行くたびに駆けつけたいと思うのだが、どこで歌っているのかわからない。前回調べたところ、コザの「とみ子の店」で活動していることを知り、電話をかけてみたが、もう使われていなかった。

情報求ム。

●参照
『獏』 (嘉手苅林次参加)
嘉手苅林昌「屋慶名クワデサー」、屋慶名闘牛場
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』
小浜司『島唄レコード百花繚乱―嘉手苅林昌とその時代』
大島保克+オルケスタ・ボレ『今どぅ別り』 移民、棄民、基地


奈良原一高『王国』、『人間の土地』、『ブロードウェイ』

2014-11-23 08:38:11 | 写真

竹橋の国立近代美術館に足を運び、奈良原一高の写真を観る。目当ては『王国』だが、常設展のなかで、『人間の土地』、『ブロードウェイ』も展示されている。

『王国』(1958年)

第一部「沈黙の園」では北海道の修道院、第二部「壁の中」では和歌山の女性刑務所が撮影されている。

信仰、監禁と理由は異なるが、閉ざされた場所において生きている人の姿を見出すことができる。単なるルポでもなく、また、被写体への違和感や感情移入を強制するものでもない。間には確実にカメラ=私があって、そのことが独特の緊迫感をもたらしているように思える。

『人間の土地』(1956年)

この写真家のデビュー作。春休みに九州一周旅行をする際に、鹿児島の黒神村(溶岩で断絶された村)や長崎の軍艦島に立ち寄ることを勧められ、強い印象を持ったことがきっかけだったという(『こだわり「カメラ」のスナップ流儀 Vol.2』、2000年)。すなわち、「隔絶された状況の中での生活」というコンセプトは、その後の『王国』にも共通している。

被写体に向かう独特のスタンスは確かにこのときから感じることができる。すなわち、己とは異なる向こう側の世界に身を置きつつも、厳粛に凝視しているような・・・。

『ブロードウェイ』(1973-74年)

ニューヨーク・ブロードウェイの路上に立ち、魚眼レンズで撮った風景を、4点組み合わせてプリントした作品群。こう観るとデジタル的でコンセプチュアルな奈良原一高。


「泣き女」と「妓生」のドラマ『The Dirge Singer』

2014-11-23 00:17:15 | 韓国・朝鮮

韓国KBS制作のドラマ『The Dirge Singer』(2014年)を観る。(>> 英語字幕版

母親の仕事である「泣き女」を継ぐことを拒否した女。一方、高貴な家に生まれながら、母親が「妓生」であったために、家のなかで軽んじられている男。女は笑うために妓生となろうとするが、差別されている者たち同士の感情から、なかなか受け容れられない。ある日、男の兄が亡くなり、女は葬儀で激しく泣くことを強要される。男も泣くことを選ぶが、それは高貴なる家からみれば恥ずべき行動だった。

日本とは異なるかたちの差別の歴史か。