Sightsong

自縄自縛日記

高倉健のゴルゴ13

2014-12-06 09:32:45 | 中東・アフリカ

先日亡くなった健さんへの追悼のつもりで、佐藤純弥『ゴルゴ13』(1973年)を観る。

ゴルゴ13ことデューク東郷は、ある国の情報機関から、「ボア」という男の殺害依頼を受ける。「ボア」は麻薬と武器の商人であり、最近では、美女ばかりを誘拐しては人身売買を行っていた。情報機関は、「ボア」逮捕により出身国の警察に引き渡されてはならないと考えたのだった。潜入国はイラン。テヘランからエスファハンへと「ボア」を追い詰めていくゴルゴ。「ボア」は何人もの影武者を使ってわが身を護り、さらに、パリから腕利きの殺し屋を呼び寄せる。

殺しの依頼国も、悪人の出身国も明らかにしないのは、イランへの配慮だろうか。イラン側からは、正義感の強い刑事を登場させ、華をもたせている。さらにイスファハンの美しいモスクなどの場面もあって、観光映画にもなっている。

それにしても、こんな映画を共同制作するとは、パーレビ朝時代のイランは映画に対して鷹揚だったのだろうか。同時期にイランでも撮られた、ピエロ・パオロ・パゾリーニ『アラビアンナイト』(1974年)なんて、さらに信じ難い。ジャファール・パナヒに映画作りを禁じている現代のイランとはまったく違ったわけである。(もちろん、良し悪しの観点ではない。)

もっとも、ここでは、『ゴルゴ13』の漫画に付き物のお色気シーンは最小限にとどめられている。『アラビアンナイト』のエロエロぶりは寓話であり、女性から迫っていく展開の『ゴルゴ13』などインモラルに違いない。 

健さんはというと、残念ながら、ミスキャストに見える。どうしても人間味が出すぎてしまうのだ。ゴルゴはもっと非情でクール。千葉真一版のほうがハマっていると思うのだがどうか。

●高倉健
降旗康男『地獄の掟に明日はない』(1966年)
斉藤耕一『無宿』(1974年)
森谷司郎『八甲田山』(1977年)
蔵原惟繕『南極物語』(1983年)
降旗康男『居酒屋兆治』(1983年)
降旗康男『あ・うん』(1989年)
降旗康男『あなたへ』(2012年)
健さんの海外映画